厚生労働省は10月5日、第529回中医協総会を開催した。この中で、医療経済実態調査のデータ分析結果に言及。これによると、一般病院における常勤看護師1ヵ月当たりの給与の平均値は全体で40万4000円。うち医療法人で37万5000円、国立で43万9000円、公立で47万3000円(グラフ参照)という結果となった。
同調査結果に基づき、荻原和宏保険局医療課保険医療企画調査室長は、一般病院・公立における看護師の月収について他の経営主体より多くなっていること、一般診療所における看護職員の月収については偏りが見られ、半数以上の施設が全産業平均を下回る結果となったことに触れた。
こうした点を踏まえ、医療機関の経営状況や職種別の給与配分などを見える化していく点には多くの委員が賛同した。ただ、医療経済実態調査では、「職員給与について勤続年数や保有資格、勤務状況などを勘案して把握していない」ことや、「民間企業と医療法人との単純比較は能わない」など、問題も指摘された。
島弘志委員(日本病院会副会長)は、調査の限界を踏まえ、「分析はあくまでも慎重に行うべき」旨を強調。長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「看護職員には正看護師と准看護師があり、かつ病院と診療所の勤務体系に夜勤有無などの差があり、単純比較は難しい」と、具体性の不足を指摘した。
合わせて、吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)は、「看護職員の給与がどのように推移しているのか、新設された看護職員処遇改善評価料を算定しているか否か、今回対象外かなど病院の賃金変化などを経年的に見ていくことが重要」と述べた。
池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「看護補助者の給与体系や分布なども見ていくべきである。また、薬剤師については、病棟薬剤師と保険薬局の間に大きな差があると聞いている。人材確保に極めて重要な論点」と指摘。鈴木順三委員(全日本会員組合組合長代行)からは、「時代とともに求められるデータも変わってくるため、医療経済実態調査において項目の見直しなどを検討し、キャッシュフローに注目すべき」との指摘もあった。
一方で、公益代表の委員からは、「診療科や開設地なども勘案した分析を行い、データに基づいた政策議論を進めるべき」(永瀬伸子委員・お茶ノ水女子大学基幹研究院人間科学系教授)や、「給与の詳細は、別の厚生労働統計である賃金構造気温統計調査などを用いるべき」(飯塚敏晃委員・東京大学大学院経済学研究科教授)といった意見もあった。
これらについて、荻原企画調査室長は検討に挙がった意見を念頭に、公的価格評価検討委員会に分析結果を報告する予定。