「軽視の風潮、法改正を」と毎日新聞

 

「家事労働の労災認めず」「女性急死 労働時間に参入せず 東京地裁が請求棄却」と9月30日、東京新聞は1面トップで大きく扱った。労働基準法には家事労働者は「適用しない」とあるからという。だが、業者に雇用されて派遣されれば適用されるというから不可解だ。

 

「理不尽な現状」「法改正が急務」としたのは10月7日の毎日新聞社説。ドイツの介護保険では家族や隣人が介護者として認められ、労働法規を適用されていることを指摘して欲しかった。

 

 

映画監督、ゴダールの死を読売新聞を除くほとんどのメディアは地元紙をうのみして「自殺幇助」と報じた。自殺幇助は「死を選んだ人が医師処方の薬物を自ら使用する」(9月14日の毎日新聞)こと。だが、オランダなどでは医師が直接注射する死を含め共に安楽死としており、本来、安楽死とすべきだろう。

 

映画評論家の中条省平氏は9月20日の日本経済新聞で「安楽死」と断言している。蓮実重彦氏も9月15日の朝日新聞で「自らの生命さえおのれで操るかのように」という絶妙な表現で安楽死に肩入れした。デビュー作「勝手にしやがれ」の宣言通りの死に共感できたのは、記者ではなく映画の見巧者たちだった。

 

偶然だが、フランス政府は安楽死容認に向けた意見聴取を始め、来年3月に結論をまとめるという。15日の産経新聞と東京新聞が報じた。

 

 

読売新聞は9月29日の夕刊と翌日の朝刊で「サ高住、常駐なしの条件厳格化」「国交省 要介護入居は対象外」と、日中でも職員の常駐義務を課したとスクープ扱いで伝えた。常駐なしを容認した7月の改正省令の見直しだ。同紙はサ高住への管理強化を主張し続けている。

 

 

10月6日の日本経済新聞は1面で「健保組合、半数が赤字」とスクープした。健保連の発表を受け各紙は7日に「健保組合53%が赤字」(朝日新聞)と後追い。赤字で大変という論調ばかりだが、日経は7日に「制度立て直し急務」として、「支払い能力に応じて負担するよう後期高齢者医療制度の保険料の引き上げ」を提言し、存在感を示した。

 

 

コロナ対策として感染症法の改正案が10月7日に閣議決定した。読売新聞が1面トップで同日の夕刊に「感染症医療の提供義務」「医療機関 都道府県と協定」といち早く報じた。翌日の各紙は「違反には罰則」(産経新聞、毎日新聞、東京新聞)を強調した。

ただ、「民間医療機関にも協力を求める」という抜け道への言及がないのは残念だ。コロナ病床への転換を忌避したのは中小の医療法人だったはず。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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