コミュニケーションの一工夫で信頼関係構築
前回に続き、「営業の基本」についてです。全16項目のうち、今回は⑺~⑿項目を紹介します。
⑺相手にとことん集中!
話を進める上で、最も重要なのが「相手が何に興味を持っているか」を見極めることです。相手の「目の動き」「手の動き」「メモの取り方」「質問の進め方」などにその兆候が顕著に現れます。
それらを見逃さないためには、例えば資料やタブレット端末を使って説明する際にも、相手に目を配りながら話を進めることが必要です。その準備として、説明の内容は完全に把握しておく必要があります。時間を忘れるくらい、とことん相手に集中しましょう。
⑻「なるほどね」「そうそう」などの種類の反応はチャンス!
「驚き・発見・共感」などの意思表示が見られた場合、その日の訪問営業は概ね成功です。
逆に、このような反応を引き出すためには地域で起こった事や介護保険関連のニュースなど、様々な話題の引出しを持って面談に臨む必要があります。
⑼「~ですか?」よりも「~ですよね」形式!
相手に対して判断を仰ぐ質問は、答えをネガティブにさせる傾向があります。反対に、相手に同意を求める形式の内容は、よほど大きく否定される内容ではない限り、「そうねぇ」から「そうそう」まで肯定的な返答を導き出しやすいものです。
また、最初の質問であればあるほど、ある程度抽象的な質問の方が、ポイントを小さく絞った質問より、簡単に返答いただけることが多いです。
例えば、「グループホームに興味を持たれているお客様はいらっしゃいますか?」と言う質問よりも、「認知症をお持ちのお客様、いらっしゃいますよね」のほうが、肯定的で、次に続く返答を導きやすいものです。
⑽「YES・NO」形式で返答できる簡単な質問から!
一種の「フット・イン・ザ・ドア」テクニックの応用として、「簡単な承諾=小さな答えの導き出し」を繰り返すことで、大きな情報の引出しやサービスに依頼に繋げることができます。
最初に「YES」と答えた相手は、次の依頼に対して否定する確率が数段下がってくることは、科学的に証明されています。
例えば、お客様に関する情報を引き出す際、「担当CM名」や「要介護度」などの個人情報の核心に迫る質問よりは、「男性の方ですか?」といった限りなく一般的な質問のほうが、応えて頂き易いものです。
⑾「両面呈示」の説得力!
聞かれて都合の悪い点(デメリットなど)は、こちらから話をすることで説得力が増すことがあります。
物事には、全てメリットとデメリットがあります。しかし、サービスを利用して頂きたいと思うあまり、そのメリットの面しか話さない場合があります。これを片面(一面)呈示と呼びます。
しかし、説得力のある話をする場合には、デメリットも敢えて呈示することの方が効果的です。
例えば、洋服を買いに行った時、全ての商品が「お似合いですよ!」と言う販売員よりも、「こちらの柄は、あまりお顔映りが良くないですね」と、ある程度のネガティブな情報を呈示する販売員の方が信用したくなるのではないでしょうか。
但し、信頼を損なうと判断される可能性のある情報を、むやみに呈示することは却ってマイナスになる場合があるので、必ずカウンターパートとなるポジティブ情報を吟味して活用して下さい。
⑿一度会えたからといって窓口を増やすのはご法度!
営業していると、話を聞いてくれる取引先とそうではない取引先に分かれます。話を聞いてくれる取引先は「好印象で関係が出来ている」と思いがちで、次々と違う担当者を連れて同行営業を重ねる人がいます。これは、タイミングを間違うと、折角出来つつある関係を崩す危険性がありますので注意してください。
日々の営業活動で、まずはできることから始めてみましょう。次回は「営業の基本」最終回です。
伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表
介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。