トヨタ関連企業では、数社が豊田市内で介護事業を手掛ける。その1つがトヨタすまいるライフだ。
不動産の売買、建設などの事業を主軸としつつ、サービス付き高齢者向け住宅「T-グランシア水源」や併設する訪問介護、居宅介護支援事業所などを運営。トヨタ式「カイゼン」を取り入れ、介護現場でも業務を見直す文化を根付かせている。
問題解決の文化、定着
サ高住は、部屋の平均面積が約38平米、最大69平米と広めで、約1100坪の庭園を保有。敷地内にクリニックや訪問看護を置くこと、コンシェルジュの細やかな毎日の声かけなどにより安心感を提供し、全80室が満室だ(9月中旬時点)。
同グループならではの取り組みとして、業務見直しにより作業効率向上を目指すトヨタ式「カイゼン」を取り入れる。全職員が年に6件の現場の課題・カイゼン方法を提案し、実行に移している。
例えば、入居者のおむつの在庫管理にはトヨタ生産方式の1つである「カンバン方式」を用いた。これまではヘルパーが担当入居者のおむつの在庫を確認し、併設する福祉用具事業所に口頭等で発注を依頼。在庫確認時間は入居者9名で計月120分、納品時間は月160分、合計280分要していた。また、担当者によって発注ミスが生じ、欠品が平均月3件、誤発注が平均月2件発生。余分な在庫を抱えるなど3M(ムリ・ムダ・ムラ)が生じていた。
そこで、おむつの種類や個数を明示した「カンバン」を作成。各部屋で保管するおむつの1袋目と2袋目の間にカンバンを挟み保管。1袋目を使い終わった際、カンバンをヘルパーが福祉用具担当者に渡し、その情報に基づき発注と納品を実施するようにした。
「結果、欠品も誤発注も0件になり、在庫確認・納品時間も月100分に短縮。ヘルパーと福祉用具担当者との人間関係も良好になり、利用者からの信頼も取り戻しました」と広滝良彦副施設長。
小さな課題でも、全職員60名が6件実行すれば、1年で360件もの課題をカイゼンすることになる。提案が実現し、生産性が上がれば職員のモチベーションも向上する。

「カンバン」をおむつの間に挟んでいる
ほかにも、従業員満足度を高めるため、今年度から職能要件の見直しにも着手。職能要件・賃金・人事評価や研修をリンクし明確化している。従業員満足度を顧客満足度につなげていく考えだ。