訪問入浴のパイオニアであり、在宅から施設、福祉用具事業まで全国290ヵ所以上を展開するアサヒサンクリーン(静岡市)。9月、脳卒中など神経疾患のためのリハビリに特化した「脳神経リハビリセンター名古屋」を開設し、新規事業に乗り出した。立ち上げの背景や今後の事業展開について、浅井孝行社長に話を聞いた。

 

アサヒサンクリーン
浅井孝行社長

 

 

最先端機器活用に強み 保険外の利点 宿泊コースも

 

 

――新規事業「脳神経リハビリセンター」立ち上げの背景は。

浅井 2020年に事業整理を行い、会社の存在意義を明文化する中で「いつもの安心を、ずっと」という理念がより強固なものとなりました。当社のサービスは、例えば訪問入浴など、ただ「お風呂に入る」という、当たり前のことを支えるものです。これを「ずっと」提供するという会社の意思、方針です。

 

当社のステークホルダーとしては、利用者、社員、取引先などに加え、今後は地域や社会も重要となるでしょう。「人生100年時代」と言われる現代において、人々の不安は「経済不安」「健康不安」「コミュニティ・社会性への不安」の大きく3つに代表されると考え、この中でも「健康不安」に介入できる新規事業を検討しました。

 

そうした中で、例えば脳梗塞になっても、後遺症を改善し介護を必要としない「いつもの」日常を長く送れるよう、また保険制度の制約にとらわれずリハビリに取り組めるよう、理学療法士などセラピストと1対1で長時間取り組める、自費リハビリ事業の立ち上げにたどり着きました。

 

 

 

――提供するリハビリの特徴について

井 ポイントは3つあり、1つは最先端の歩行支援リハビリ機器を導入していることです。現在、サイバーダイン社のHAL、イノフィス社のマッスルスーツ、エクサウィザーズ社のトルトに加え、東海エリアでは初導入となるAssist Motion社のクララを導入。セラピストによるストレッチなどと組み合わせ、機器を活用して後遺症改善を目指します。

 

2つ目は、隣接する介護付きホーム内に宿泊し、短期集中的にリハビリを実施できるコースを設けていること。利用者の生活の中で改善が必要な部分をサポートする視点で行います。

 

3つ目は、自費サービスのため1回90分と密度の濃いリハビリが受けられることです。料金は8回コース16万7200円~。16回コース、24回コース、宿泊コースなどを用意しています。体験もでき、90分無料です。これまで、脳梗塞による右側麻痺で杖歩行をしていた70代男性が、月4回の利用で杖を使用せず歩行できるまでに改善した例もあります。

 

 

 

――今後の事業所展開について

浅井 今回の開設は、当社が運営する介護付きホームに隣接する遊休資産の土地を活用してスタートしました。今後3年間でしっかりと事業化していくことが目下の課題であり、仙台市、大阪市でも遊休資産を活用した開設を予定しています。

 

これに加え、テナントでより利便性の高い立地にさらに3ヵ所開設します。3年の間にこれら計6ヵ所を運営しつつ、ニーズとサービスを見極めていく考えです。これに介護予防フィットネスの事業も組み合わせ、既存事業とのシナジーを図っていく構想も立てています。

 

 

 

――訪問入浴など既存事業や海外展開など、幅広く取り組みを聞かせてください

浅井 当社は1977年より訪問入浴サービスを提供していますが、この訪問入浴は、成長する介護産業で唯一縮小しているサービスです。人材不足に起因する事業所閉鎖なども増えており、当社でも承継しているケースがありますが、基本的には自社での新規開設により拡大していく方針です。

 

訪問入浴は設備が重要なので、カーボンプラスチック素材(CFRP)の浴槽やマイクロバブル機器を自社開発し、差別化を図っています。平均で23㎏ある浴槽ですが、当社の浴槽は11㎏。マイクロバブルは全車両に搭載し、洗体効果を高めています。

 

また、深刻化する人材不足に際し、外国人人材の活躍は不可避と考え、資格取得支援・育成事業にも着手。「介護福祉士資格を取得して日本で活躍したい」との声を受け、介護福祉士取得のためのWEB教材を11月に完成させるべく、東南アジアの現地のSEと開発を進めています。

 

なお、社員にとっても「いつもの安心を、ずっと」届け続けたいとの思いから、資格取得者が母国へ帰国した際にも活躍できる場を創出するべく、海外展開にも着手しました。特定技能実習生を送り出している国での介護事業立ち上げに伴い、現地法人との共同出資の形で準備中です。現地法人の介護事業立ち上げ支援や運営サポートを手掛けることも検討しています。福祉用具事業や人材紹介などのノウハウも活用できるでしょう。

 

 

 

 

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