小規模多機能型居宅介護事業所、地域密着型通所介護事業所などを運営するふれんどりぃ(神奈川県座間市)は、認知症ケアの一環としてアートの制作に取り組む。今年、法人初となる都内での作品展覧会を実施した。

ふれんどりぃ
筒井すみ子社長
比較的要介護度が低い人が利用するデイサービス「おけいこサロン寿」では、曜日ごとに異なる講師を呼び「お稽古」を提供。絵手紙、フラワーアレンジメント、茶道、書道、音楽療法などジャンルは幅広く用意。加えて、利用者同士のサークル活動も行っており、映画、脳トレ、手芸など、こちらも内容は多彩だ。自分の好みの活動の日に通うことができ、利用者は継続しやすい。
小多機では利用者、スタッフ全員で2 〜3ヵ月に1つほどのペースで作品を完成させる。たまごの殻を着色しそれを貼り付けて作ったモザイクアートの「ひまわり」、古着を切れ端状にして発泡スチロールの土台に貼り付けて描いた「富士山」など、一味違った手法を用いているのが特徴的だ。「予算を5000円までと決めているので、不用品を再利用した作品が多いです」(筒井すみ子社長)。そうした制約が新たなアイデア、インスピレーションを呼び起こし、個性豊かな作品が生み出される。
制作に際して、「小さいものをつまむ」「はさみで布を断つ」といった作業が日常生活動作の訓練になる。加えて、古着など生活に密着したものが材料となるため、「昔子どもがこういった服をきていた」「その時にはこんなことがあった」など自然と思い出話が盛り上がる。それが「回想療法」になっているのだという。
筒井社長は「作品を作るからには誰が見ても『すごい』と分かるものにしたい」と、思いを口にする。そうして仕上がった作品はこれまで市のホールなどで展示されていたが、さらに多くの人に関心を持ってもらうことを目的に、今年9月、法人初となる都内のギャラリーでの展覧会を実施。当日は座間市長なども応援に駆け付け、182 名の来場者がアートを鑑賞した。
展示会では作品横のキャプションに、スタッフがどのような目的で、どういった支援を行ったか、といった点も記載された。こうした介護のプロとしてのスキルを知ってもらうことでスタッフの自己肯定感を高めると同時に、介護の魅力発信にも貢献する。
「展示会の開催で、利用者、スタッフが達成感を得られ、さらに来場者から『歳を重ねてもこうした作品を作ることができる。勇気づけられた』と声が届きました」と筒井社長は話した。

小多機のメンバーで制作した「ひまわり」