練馬さくら病院やさくらライフクリニックなど12医療機関で在宅医療を行うさくらライフグループ(東京都墨田区)の中田賢一郎代表は1日、浄土真宗大谷派の僧侶となった。医師として、宗教家として、看取りの現場で患者・家族の心身の痛みや悲しみを緩和させたいのだという。

さくらライフグループ
中田賢一郎代表
これまで中田氏は在宅医療の現場で2000人以上の患者を看取ってきた。病院での勤務を含めればその数倍が見込まれる。
看取りは、患者の体の痛みや心の苦しみ、家族の悲しみなど、医療・介護職も含め関わる人たちの感情が揺さぶられる場所でもある。
中田氏が僧侶を目指したきっかけは、過去にさまざまな宗教家の人たちと一緒に末期患者の心のケアに当たった経験だ。
「一歩下がった位置でそのやり取りを見ていたが、病気の苦しみや死の恐怖で疲れ果てた患者の顔つきが変わった。明らかに癒されているのがわかった」
その後も、患者の睡眠導入剤や麻薬の量が減るといった現実を目の当たりにしたのだという。また、患者の死後、悲しみに暮れる家族のグリーフケアでも宗教家の力を実感した。
「在宅の現場では看取りは当たり前にある。穏やかな最期を迎えるためにも、医療だけではなく患者・家族の精神面に寄り添える医師でありたい」
禅やマインドフルネスなどを含めた宗派に偏らないスピリチュアルケアをさくらライフグループ内に浸透させ、その成果は各学会で発表する予定だ。
3年間の修行の後、各宗派の研修を終えて得度を得て僧侶となったが、さらに「臨床宗教師」資格取得を目指し大学院に進むのだという。