害虫発生時の賃貸人責任 必要に応じた点検・補修を

 

生活する上で、玄関や窓の開閉だけでなく、通気口などを通じて虫はどこからともなく現れます。特に、賃貸借契約において、賃貸物件に住み始めた頃に虫が大量発生した場合には、賃借人も不快に感じることでしょう。では、賃貸物件に、大量に虫が発生した場合には、賃貸人は何らかの責任を負うことになるのでしょうか。害虫が発生する物件を賃貸したことが、賃貸人の賃貸借契約における義務に違反するかが問題となります。

 

この点、過去の裁判例では、飲食店にネズミが頻繁に出没した事案ではありますが、「建物の賃貸借契約において賃貸人が賃借人に対して負う義務は、賃借人がその使用目的にしたがって建物を使用収益することができる状態にして引き渡せば足りるもので、その後、建物にネズミ等の生物が侵入するようになって、建物の使用に影響が生じるようになったとしても、…基本的には賃貸人の管理の及ばない事項である以上、建物に侵入したネズミの事後的駆除及び対策は、建物の構造上の問題を原因とするような場合を別として、建物を占有する賃借人が行うべき事柄というべきである」(東京地判平成28年8月17日)と判断しています。

 

当該裁判例では、建物は、換気扇や空調設備等の設備により、構造上、室外との断絶が困難であることから、虫等の室内への侵入を完全に防ぐことができないことを理由としていると思料されます。

 

また、建物を賃貸した後に建物内に害虫が出た場合の賃貸人の害虫駆除義務について、完全駆除を達成することが望ましいものの、害虫駆除の専門家に依頼して駆除を行わせ、賃貸人として必要かつ可能な対応を行えば足り、害虫の完全駆除を達成できなくとも債務不履行(修繕義務違反)にならないと判断した裁判例があります(東京地判平成25年12月25日)。

 

 

以上の裁判例の考え方を踏まえると、賃貸人は、賃借人に対し、住居として使用収益できる状態で居室を引き渡し、また入居後に害虫が発生した場合であっても、害虫駆除の専門家に依頼して駆除することで、使用収益義務及び修繕義務に違反しないと考えられます。

 

そのため、賃貸物件を引き渡す前に、建物に害虫が侵入するような箇所がないか点検し、必要に応じて補修を行うことが重要となります。

 

 

 

弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士

家永 勲氏

【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。

 

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