幼稚園で送迎バスから園児を降ろし忘れて死亡させる事故が起きたことを受けて、前回は過去の事故を分析して問題点を洗い出しました。

これらの原因を踏まえて、今回は降ろし忘れ事故の防止対策を具体的に「ミスを防ぐ対策」「ミスが起きても事故につながらない対策」「事故が起きた時損害を防ぐ対策」と3つに分けて検討してみましょう。

 

 

3種類の対策を組み合わせる

 

■降ろし忘れミスを防ぐ対策
▽注意喚起のステッカーを運転席に貼る
降車確認のチェック手順を絶えず意識させるため、注意喚起のステッカーを運転席に貼っておきます。ステッカーも毎日見慣れてしまえば、効果は低くなってしまうので、朝礼で声をかけるなど工夫が必要です。

 

▽1回の送迎終了時に車内をチェック
送迎車は複数回ピストン輸送をすることがありますから、1回の送迎が終わるたびに後部座席に上がって最後列シートまで目視でチェックします。チェックを行う時は最後列シートを指差して「後部座席チェック完了」と声をかけます。

 

▽後部座席にアラームを設置する
アメリカで行われている後部座席点検を促すアラームを設置する対策です。エンジンのキーを切ると自動的にアラームが鳴り、最後部へ行って運転手が手で押さないと鳴り止みません。運転手に後部座席に行くことを促す装置で効果は高いと考えられます。

 

 

 

■降ろし忘れミスが事故につながらない対策
▽送迎業務終了時の点検
送迎業務終了時に2回に分けて点検を行います。1回目は業務終了直後に、施設のエントランス前で行う後部座席の点検です。施設内の事務員に「車内点検お願いします」と声をかけて2人で後部座席を点検し、点検表に氏名を記入します。

 

2回目は送迎車を駐車させる時に行う後部座席の点検です。前述のアラームは運転手を後部座席に強制的に行かせますから、この場面のチェックでは極めて有効な手段です。あるデイサービスでは駐車時の後部座席の様子を、スマホで撮影しデイのPCに送り事務員がチェックしています。

 

▽後部座席の見える化
後部座席点検を励行しても、座席に横たわったり座席から前に落ちてしまえば、見逃すかもしれません。あるデイでは、後部座席シートの天井にミラーを設置して運転席から座席上が見えるようにしました。

 

▽センサーによる検知やモニタリング
センサーで後部座席をモニターし、AIを使って降ろし忘れた利用者を発見する機器が開発されていますが、価格が高く小規模デイは導入できないかも知れません。

 

▽出欠確認と不在者の確認連絡業務
降ろし忘れが死亡事故につながるのは、車内の長時間の放置ですから、出欠確認によって不在者を把握し家族に確認連絡を入れなくてはなりません。しかし、利用者が来所する時間帯、現場の職員は目の前の利用者の対応に追われてチェックが疎かになります。どうしたら良いでしょうか?

 

現場の職員以外の事務職員が「不在者の確認連絡業務」を責任を持って行えば良いのです。利用者に直接対応する現場職員に、細かい事務業務も全て負わせるのは無理があります。

 

 

 

降ろし忘れ事故が起きた時損害を軽減する対策
車内に長時間放置した利用者を発見した場合、迅速に救急車を要請しなければなりませんが、北九州市の保育園の事故では対応が遅れ裁判で問題になりました。発見時に車のエアコンを使って20分もクーリングをしていたのです。事故防止対策では事故の未然防止だけでなく、事故が起きた時の損害軽減の対策も盛り込む必要があります。

 

 

帰宅送迎時の降ろし忘れ対策
7月にあるデイで「居宅に送る時に最後の利用者を降ろし忘れて連れ帰り、一晩送迎車内に放置する」という驚くべき事故が起きました。真冬であれば凍死していたかもしれません。家族が警察に連絡、警察が運転手に問い合わせましたが「自宅に届けた」と答えたそうです。この事故の対策には課題が残ります。

 

 

 

安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」など

 

 

 

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