書評 介護・医療業界注目の一冊

 

高橋紘士編著
木星舎
2,970円(税込)

 

 

 

介護・医療・住まいの先駆例を網羅

 

「地域包括ケアを根付かせねば」と思い続けた長純一医師が4カ月前に膵臓がんで亡くなった。東日本大震災の被災者の診療を決意し、長野県から石巻市に転居。仮設住宅を訪ね、診療しながら住民同士の助け合いの輪を再構築しようと日夜駆けずり回る。

 

だが、在宅医の限界を悟り、「政治で動かそう」と市長選挙、知事選挙に挑戦。熱意溢れる真面目な医師がそれほどまでにこだわったのが地域包括ケアである。

 

 

本書はそんな地域包括ケアのあるべき姿を網羅的に学ぶことが出来る貴重な一書だろう。先駆例が次々登場する。それぞれの事業を立ち上げた経緯が子細に語られる。

 

住まい、生活支援、介護、医療など多岐にわたる領域を「これこそ地域包括ケアの重要なモデルである。なぜなら・・・・」と、編著者の高橋紘士さんが謎解きに乗り出す。

 

高橋さんは厚労省、国交省の介護保険や高齢者住宅関連の審議会の常連研究者。社会保障全般に通じたプロ中のプロが「現場」に直接踏み込んだルポでもある。書名通りといえよう。

 

 

この10年ほどの間に、専門誌や機関誌に掲載した対談と鼎談8編を集め、さらに高橋さんの執筆記事で構成。在宅医療のライフケアシステムについては書き下ろしだ。

 

登場する事業やその推進者たちの名を眺めていると、それぞれの地域が生み出した介護・医療・住まいの身近な歴史書に見えてくる。

 

 

冒頭の太田秀樹在宅医から始まり、抱樸の奥田知志理事長、みつぎ総合病院の山口昇名誉院長、NAGAYATOWERの堂園晴彦医師、自立支援センターふるさとの会の水田恵理事、ホームホスピス宮崎の市原美穂理事長、きらくえんの市川禮子理事長・・・。

 

それに、研究者たちが議論に加わる。園田眞理子元明治大学教授、三浦研京都大学教授、宮本太郎中央大学教授、大月敏雄東大教授・・・。
論客を交えた丁々発止の語りだけではない。軌跡をたどったこぶし園の小山剛総合施設長を高橋さんは「企業家」と評価。三方よし研究会やあおいけあ、宅老所よりあいの実践も見逃さない。

 

 

全編に通底するのは「尊厳の保持」を第一とする考え方であろう。窮地に陥りそうな介護保険制度だが、その第一条に掲げたこの言葉を揺るがしてはならない。

 

 

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

 

 

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