神奈川県小田原市を中心に介護事業を18拠点で展開するエイチ・エス・エーは、「選択性民主主義制度」や「先着順採用」などユニークな制度を実践してきた。企業理念に忠実な経営を行うためにこうした体制を作ったが、結果として高い収益性や低い離職率を実現している。

 

 

エイチ・エス・エー
田中勉社長

 

 

 

離職率1桁維持、2市8町でシェア20%へ

 

同社では毎年6月、全職員に「働き方提案シート」を配布。各自はこれに研修、給与、異動、キャリアアップに関する希望や提案、企画などを記載する。これらのシートの内容に基づき、労使交渉や就業規則の変更を行うという。

「当社の就業規則は、実際に〝生きたルール〟として毎年変化する」と田中勉社長。過去には、職員の紹介で人材を採用するリファラル制度や、子育てをしながら就労する人が勤務時間内に中抜けできる制度、職員に引っ越し祝いを支払う制度なども採用された。従業員も高頻度で内容を確認し、制度を活用する風土が醸成されているという。

 

 

通所、訪問、有料老人ホームなど各事業部では、事業部長が中心となりシートの内容に基づく年間事業計画を作る。売上高や利益などの数値の管理も各事業部が自律的に行うという。事業部毎の財務三表、現預金残高も毎月社内ポータルサイトに公開する。「経営陣から各事業部に、運営方針に関する指示は出さない」(田中社長)

 

同社では、基本的に経営陣や役職者が職員の人間性や仕事内容、スキルを評価することはしないという。各事業部の月商という成果のみが評価の軸となる。人材の採用も、応募の先着順で採用。役職者も、立候補した人は〝誰でも〟なることができる。現場の支持を得た職員が周囲の推薦により役職に就くこともある。誰もが役職者となれる分、その力量が事業部毎に結果として表れる。「数字を取ろうと強引な方法をとる人は、結果的に現場の支持を得られず、運営にひずみが生じる」(田中社長)反面、こうした事例が他部署の学びとなる。

 

 

こうした制度を採用したのは2012年。田中社長は「経営がうまくいくようにという意識でこれらの制度を作ったわけではない。理念を具現化したかっただけ」と語る。同社は、「価値観が異なる職員を互いに尊重し合いながら、各自で知識、技術を高め成長し協働する組織」を理念に掲げる。上司が部下を評価せず、誰もが役職者になれるのも、そうした理念に基づくものだ。「当社では、良いも悪いもない、様々な個性を持つ人が働く。会社の中に社会そのものを作っているイメージ」

 

こうした体制が結果として、経営指標の安定に寄与している。コロナ流行前は、会社全体の経常利益率は10%台に到達した。コロナ禍の21年度においても、経常利益率は約4.4%。離職率は、1桁台を維持している。

 

 

2025年までに県内2市8町でのマーケットシェアを、現在の約11%から20%まで広げることを目指すという。地域でのシェアを上げることで、人や利用者が自然と集まるようになるという。

来年には、住宅型有料老人ホームの開業を控える。デイや障害者デイなどを併設した複合型施設を予定している。今後、介護の枠を超え、「地域の総合生活支援事業」の展開を目指していく。若者の就労の場として、養鶏場の承継も構想中だ。

 

 

 

 

 

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