孤独死のリスクなどへの懸念から、高齢者は賃貸物件を借りにくく、住む場所の確保に苦労するケースが多い。また、施設への入居などで自宅を手放さざるを得ない場合に相続人がいないなどの理由でそのまま放置され空き家になってしまうこともある。こうした高齢者と住まいに関わる困りごとの相談を引き受けているのが、こたつ生活介護(東京都立川市)が運営する居住支援法人「高齢者住まい相談室こたつ」だ。松田朗室長に事業について話を聞いた。

 

松田朗室長

 

 

――事業の概要について教えてください。
松田 高齢者住まい相談室こたつではデイサービスや居宅介護支援事業所を展開しています。2018年から改正住宅セーフティネット法に基づく居住支援法人として指定を受け活動、宅地建物取引業も行っています。
具体的には、高齢者の住まいに関する相談を受け付け、情報提供や賃貸物件などへの見学同行、入居が決まれば契約や引っ越しに関わる支援をします。入居後は、社会福祉士などによる月1回の見守りもあります。また、不動産の売却、活用支援も可能。居住支援サービスは相談無料で、紹介物件の入居が決まった時、見守りなどのサービス利用時、不動産売買の契約成立時などに手数料を申し受けます。
年間の相談件数は150〜160件ほど。ケアマネジャーや地域包括支援センター経由での依頼も多いです。

 

――通常の物件紹介業者とはどのような違いがあるのでしょうか。
松田 人の「生活」というものは、様々な人と関わって成り立つものです。そして、人は様々な課題・ニーズを抱えています。それらに対応するのが地域包括ケアの体制です。介護事業者としてのネットワークを活かし、行政や地域包括支援センター、ケアマネジャーなど関係機関と、地域ケア会議など様々な場面で連携。本人のニーズをしっかり満たせる物件を提供すること、そして、関係機関と協力して高齢者を地域で支え続けることが通常の紹介事業者と異なる点です。
こうした地域包括ケアの体制があると高齢者の孤立を防ぐことになるので、物件を貸すオーナーにとっても安心材料になります。

 

 

無料で相談受付
――社会問題となっている空き家の対策にも取り組まれています。
松田 まず、空き家になってからでは老朽化や権利の問題などがあり、活用が困難になります。そこで、19年から居住支援法人としての知見を活かし、「活き家」登録推進事業を開始しました。これは自分が住まなくなった後の自宅について活用イメージなどをヒアリングした上で、「活き家」として登録してもらうもの。登録物件については利用を希望する人とマッチングを行い、利用時期や予算などを調整します。この事業は都の「令和2年度民間空き家対策東京モデル支援事業」に採択されています。

活き家として登録された物件。高齢者施設への入居資金を確保するために登録された

 

活き家の事業はこれまで累計約20件の案件に対応しています。相談内容として多いのが、「自宅を売却して施設入居費に活用したい」というケースです。例として自営業を営んでいた70代男性は、土地付き戸建て住宅を売却して施設への入居費用に充てることを希望し、活き家に登録しました。近くで物件を探していた人とマッチングし、売買が成立。男性には施設の入居支援も行ったため、「住み替えがスムーズでとても良かった」と満足してもらえました。購入者からも「夢だった断熱リノベーションが楽しみ」と、声が挙がっています。

 

 

空き家防止も推進
物件登録制度運用
――居住支援法人の数は全国で592法人(10月31日時点)となっており、日本の1718ある自治体数と比較しても少ない現状があります。
松田 数が増えない要因には、採算が合わないことがあるように考えられます。
1件の相談についてもその人が抱えている問題が多岐にわたるケースは少なくありません。1法人でそれを解決するとしたら非常に時間と労力が必要。宅建業を持っていれば仲介手数料を得ることができますが、労力と比較して割に合うものではありません。
そこで福祉の専門職や行政、社協などとの連携でそれぞれの得意な部分、「専門性」を活かせば効率化できます。居住支援法人の事業を行う上で、地域の関係者との協業体制を築くことが欠かせない要素となっています。

 

 

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