営業の目的・効果・考え方を伝える
前回までの「介護現場における『営業の基本』」をテーマとしたコラムに多くの反響を頂きました。今回と次回は、営業活動を行う管理者への指導ポイントについて、紹介します。
ケアマネジャーから顧客を紹介してもらえない場合、考えられる理由として、下記の事柄があげられます。▽そもそも、営業に行ってない。訪問したが担当者不在で、それ以来行ってない▽営業したが、顧客を紹介してもらえない(営業の質が低い、訪問回数が少ない、地域の信頼がない)
営業に行ってない場合
営業に行ってない管理者などは、「営業の必要性を理解してない」、もしくは「営業はとても難しく、苦手だ」と思い込んでいる可能性があります。まずは、営業の必要性や効果、そして「営業の考え方」をしっかり納得できるよう、理解が必要です。
⑴事業所等の現状分析
まずはPLをもとに、現状分析してください。客観的に数字を分析することで、「顧客数」「顧客単価」がどれくらい利益率に影響しているのかなど、管理者自らが理解できるような指導が重要です。
⑵営業の「目的と効果」を具体的に考える
事業所をどのように活性化させたいのか。そのために必要な「売上・利益の目標」、その目標数値を達成するために必要な顧客数を考えさせます。「とにかく沢山」とか、「できるだけ多く」という抽象的な目標よりも、効果的です。
⑶「営業の考え方」を説明
具体的な目標を設定した上で、「営業とは何か」ということを分かりやすく伝えます。他事業所に対して管理者などが行うべき営業とは、下記3点です。
①自分の顔と名前、事業所名、所在地を覚えてもらう
②どのように役に立てるかを具体的に、一生懸命伝える
③「ぜひ、お任せてください!」と言い切る
高度な営業スキルや難しいトークではなく、明るく・元気であることが大切です。
営業したが、紹介してもらえない場合
営業訪問したにもかかわらず、顧客を紹介してもらえない場合、ほとんどは営業の質が低いことが考えられます。一方的なPUSH型の営業となっている可能性があります。同行することにより、管理者などが苦手としている部分を確認し、具体的な指導をしてください。
⑴営業の質が低い
①サービスを理解する
自事業所などで提供可能なサービスはもちろん、エリア内で法人が提供している他のサービスも案内できるよう、「サービス知識」とその「売り」は最低限把握しておいてください。
②成功事例を準備する
ADL向上・要介護度改善、認知症の周辺症状改善などの成功事例を最低5つ用意してください。
③トークスキルを磨く
表情:とにかく「笑顔」は基本です。但し、こわばった笑顔は相手にも緊張感や警戒心を持たせることになります。自然な笑顔で接するコツとして、まずは担当者と「会えたこと」を素直に喜びましょう。
話すスピード:「あまり時間がとれない」と言われても、こちらが急いで話をすればするほど、相手も気持ちが焦ってきて落ち着きがなくなるでしょう。相手に席を立たれてしまっても、「お時間をいただいて、本日は本当にありがとうございました。次回、またお役に立つ情報がありましたら伺います」と笑顔でお伝えし、次回の訪問につないでください。
⑵訪問回数が少ない
よくある訪問回数が少ない理由です。
①担当者の対応が冷たかったことで、行き辛くなっている
②「何かあれば連絡します」と言われ、待っていれば良いと思い込んでいる
③負の遺産がある(過去のトラブル・クレーム)
状況をよく説明した上で、前向きに営業を継続していけば、必ず信頼回復に結びつく旨を伝えてください
伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表
介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。