デイサービスや居宅支援事業所などを運営し、配食事業や介護予防・日常生活支援総合事業も担うサンエスケアサービス(愛知県岩倉市)。お泊りデイの「デイサービスセンターさんえす」では、“職員本位の”スケジュールやリスク管理、効率化に囚われず、利用者が自己決定・自己遂行しやすい環境づくりを徹底。利用者の希望を実現させ、家族やケアマネジャーからも信頼を得ている。野村由治社長に話を聞いた。

サンエスケアサービス 野村由治社長
――〝お世話型〞の介護はしない方針と聞いた
野村 利用者が在宅で生活し続けられるための自立支援を最重視している。例えば、利用者が上着を脱げないことに気が付いた時、職員がすぐに脱がせてあげる〝過剰介護〞は、利用者の能力を奪う。
職員には「じれったくても手を出さないで」と指導している。なぜ脱げないか、肩の可動域が狭いのか、といった観察・コミュニケーションを通じ、「どう支援すれば上着を脱げるようになるか」と考え、実行するのが本当の介護職の役割。
――デイの活動内容は
野村 各利用者の個別活動が中心で、細かいスケジュールはない。ただ、「デイは訓練する場であり、家に帰ってからが本番である」と利用者や職員に伝えている。例えば、「室内でエアロバイクを漕ぐだけでなく、外へ行きたい」という利用者がいれば、その意欲を尊重して実際に自転車を漕ぐ外出を実現させる。そこで職員はきちんと見守りつつ、どのような場面だと危ないかを評価。家でも安全に自転車に乗れるよう、PTとも連携しながらサポートする。

室内でエアロバイクを漕ぐだけでなく、実際に自転車を漕いで外出
――リスクが伴い、限られた人員の中でどのようにそれらを可能にしているか
野村 「家が本番」という方針や「リスクはあって当然」ということは家族やケアマネにも説明する。利用者がやかんでお茶を注ぎこぼしてしまっても、それは家でも起こり得ること。逆に、家でお茶を注がなかった人が注げるようになるなど、できることを増やし、報告することが家族やケアマネからの信頼獲得にもつながる。現在の運営状況としては、利用者の平均介護度は2で、稼働率は8〜9割を維持できている。
また、利用者20名程に対し職員は10名程という手厚めの配置で、利用者のペースに合わせられる余裕を生んでいる。利益率は高くならないが、自立支援を実現させるには必要なこと。また、備品の準備など間接業務は積極的に利用者に行ってもらうことで、結果的に職員が利用者と接する機会を増やしている。
――「在宅での自立支援」を軸に他事業も手掛けている
野村 配食事業を行っており、デイの昼食だけでなく、岩倉市生活支援型給食サービス事業の指定事業者として、地域住民にも配食している。
昨年には市内初の総合事業の通所サービスAとして「買い物ができるデイサービス」をスーパー内に開設した。「買い物」という役割を担いながら在宅生活を続けられる人を増やすべく、内覧会などを通じ認知度を高めている。

「買い物」で効果的なリハビリを