女性入居者の裸を写真撮影
報酬の不正請求などで行政処分を受ける介護事業所・障害サービス事業所は、残念ながら今年も数多く見られた。一連の処分理由の中でも「利用者虐待」は社会に与えるインパクトが大きく、一般メディアでも大きく報じられることが多い。今年の関西では以下の2つのニュースがネット上などを賑わせた。
1件目は大阪市内の認知症高齢者グループホーム。複数のスタッフが利用者に虐待行為を行っていたとして、2月1日より6ヵ月間の新規利用者受け入れ停止処分と介護報酬3割減の処分を受けた。
虐待の内容は「女性入居者の裸の写真を撮影する」「入居者の身体や手に落書きをする」「足を縛る」など。これらの虐待行為は2020年10月に内部通報によって発覚した。運営事業者は少なくとも19年12月には虐待を把握していたが、市への通報を怠っていた。
また、この運営事業者は、20年3月に市が行った監査で、「介護サービス品質向上のための具体的な研修計画を作成すること」などの改善指導を受け、改善報告書を提出したにもかかわらず、改善が維持されていなかったことも今回の処分理由となった。
2件目は、先月、来年3月1日から半年間の介護サービス事業者の全効力停止処分を受けた大阪市内の老健。処分理由は利用者への身体的・心理的・性的虐待。一般紙などの報道によれば、複数の女性利用者に対して、下半身を触る、殴るなどの虐待が行われていたという。なお、こちらも虐待行為は内部通報により発覚している。
また、以前にも虐待があったとして、一昨年・昨年の合計3回、市より行政指導を受けていたという「前歴」もあった。
処分期間中、利用者はほかの施設へ移ることになるが、要介護の高齢者にとって入居先が変わることは身体的な負担はもとより、認知症患者の場合には精神的に不安定な状況になるリスクもある。その点を考えると、実際に虐待を受けていた利用者だけでなく、全く無関係な利用者に対しても様々な面で大きなダメージを与えることになるといえる。
先日発覚した静岡県裾野市の保育施設での虐待行為では、保育士3名が逮捕される結果となった。このように「虐待=刑事罰を受ける可能性がある」ということをしっかりと認識させることが虐待を防ぐ上でのポイントの1つになるだろう。