サービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」を展開するシルバーウッド(千葉県浦安市)。認知症を疑似体験できる「VR認知症」をはじめ、VRを活用した研修事業に取り組む。中でも注力するのが、VRで看取りの場面を体験できる「高齢者住まい看取り研修」。
「良い看取りは介護職の専門職としての価値を高め、ひいては介護人材を増やす大きな可能性を秘めている」と語る下河原忠道社長に、その考えを聞いた。

下河原忠道社長
一般企業向けコンテンツも
――看取り研修事業に注力する意図は
下河原 業界ではサ高住の看取り率は3割に満たず、特養などでも最終的に病院に搬送されるケースは多い。施設での看取りが十分に広がらないのは、職員が〝得体の知れない恐怖感〟を抱いており理解が進んでいないことも一因だ。
一方、当社の銀木犀では自然な老衰死を大事にし、看取り率は7~8割に及ぶ。職員は良い看取りを経験することで仕事に誇りを持ち、「どう生きたいか・死にたいか」に向き合うことで日頃からのケアの質向上につながっている。無益な延命医療を行わない、介護職主体の看取りができる事業者がもっと増えてほしいと考え、4年程前から取り組んでいる。
――なぜ「VRで」看取り研修をするのか
下河原 VRだと、「一人称」でリアルに疑似体験できる。例えば、救急搬送される入居者視点の映像では、どのように医療措置がなされ、不安な心境になるかを当事者視点で感じられる。こうした映像は沖縄県立中部病院の協力を得て作成した。そのほか、特養での看取り事例など社会福祉法人愛川舜寿会とタッグを組んだ映像なども作成している。
――研修内容は
下河原 VR体験だけでなく、ワークショップ・講義を通じディスカッションする中で、「死と向き合う覚悟」を獲得できる内容。90分~4時間のプランがあり、30人開催の場合は2時間23万円~。これまでに6700人以上が参加。自治体によっては地域医療介護総合確保基金の補助金を活用し受講できる。
――VR事業の今後、最近の他事業展開は
下河原 現在、VRは視覚障害やLGBTをテーマにしたものなど50以上のコンテンツがあり、一般企業からも定評がある。今後は子育てする男性視点のコンテンツを作成予定。
他事業では、石垣島にホテルをつくっており、当社の職員が無料で泊まれる機会を提供したい。介護職が様々な経験をし、視野を広げることは重要だ。

介護職員だけでなく医療関係者や自治体・厚労省の職員なども体験している