<在宅医療事始 ~医療連携、その現状と展望~>
冬場における高齢者の健康上の注意事項について検討してみたいと思う。夏場は汗をかくため、血管内の水分が外に出ていき、脱水傾向から血圧が下がりやすい。逆に言えば、汗をかかない分、冬場の方が血圧は上昇しやすい。
寒い朝の時間帯に高齢者がトイレに行って、血圧上昇からめまいやふらつきを訴えたり、場合によっては安定した内服をすることができず、血圧が上がったりするのはこのためだ。12月に入り、急激に気温が低下した際などは、今までの経過以上に血圧が不安定になる患者が出てくることが多い。
重要なのは毎日のルーティンワークを大切にし、気温の低下などを含めて、血圧の変動が出ていないかどうかを考えること。その時その時の血圧だけを判断するのではなく、経過として「夏の頃から比べると徐々に上がってきたな。それに伴って最近なんとなく頭が痛いなどの不定愁訴が多いな」といったことに気を配ると、身体の異常を早期発見でき、重篤な状態になる前に細かなコントロールが可能となる。
また、逆にあまり暑くない日が続いており、それによって喉の渇きなどを感じづらくなっている認知能力の低い高齢者においては、注意が必要だ。水分摂取が著しく低下することによって便の中の水分が減って、便が硬くなる。便秘がひどくなり、一時的に尿量が減って、膀胱炎を起こしたり、逆にそれが脱水のきっかけとなり、血圧が思った以上に下がったり、ということも起こり得るかもしれない。特に利尿剤などを内服している患者においては、水分摂取と排尿の量、それに伴う血圧のコントロールについて経時的にみることができると、より丁寧なケアができるようになる。
特に冬だから、特に夏だからといって今までの方法を変える必要は無い。今まで行っているルーティンワークを丁寧に繰り返すことによって、その積み重ねの中から患者の細かな変化を読み取ることができる。そこから得られる気づきから、患者の変化が起こっているのかを主治医もしくは担当ナースに伝えることから、丁寧な医療は始まっていくだろう。
高齢者施設において、主治医はほぼ2週間に1回、1〜2時間診察をするとしたら、毎日患者に接している皆さんだからこそ、ルーティンワークを積み重ねることで細かな変化に気づくことができる。その方の全身状態を管理している皆さんだからこそ、そういった目的と、ケアの最前線に立っていると自信を持って仕事に邁進してもらいたい。
髙橋 公一
医療法人社団 高栄会 みさと中央クリニック
埼玉医科大学病院 第一外科入局。消化器・一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺内分泌外科、移植外科、脳神経外科、小児科などを経験。2001 〜03 年に外科留学、移植免疫学を学ぶ。帰国後、埼玉医科大学に復職し、チーフレジデントを勤める。その後、池袋病院外科医長、行田総合病院外科医長を経て、08 年みさと中央クリニック開院。17 年に法人化。