新型コロナの長期化は医療機関をはじめ社会経済に大きな痛手を与えた。それに加えて800万人の団塊世代が後期高齢者となる2025年も目前だ。コロナでボロボロになった病院がさらに高齢化の津波に飲み込まれようとしている。解決の糸口は何か?我々はそれを、地域に密着したコミュニティホスピタルとそこで活躍する総合診療医に見出したい。

 

とくに200床以下の中小病院の経営改善が待ったなしだ。これらの病院が目指すのは地域に密着した病院運営にしかない。我々はこうした思いから、22年に「一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会」(以下・C&CH協会/東京都台東区 代表理事:武藤正樹)を立ち上げた。

 

C&CH協会ではコミュニティホスピタルを以下のように定義している。「コミュニティホスピタルとは、総合診療を軸に超急性期以外の全ての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供する病院」のこと。キーワードは「総合診療」だ。

 

 

私事にわたるが、著者は1987年から2年間、当時の厚生省の留学制度で、米国の総合診療である家庭医療(ファミリープラクティス)の研修を受けた。ブルックリンの下町にあるニューヨーク州立大学付属病院の家庭医療科への留学だ。そこでは家庭医療科の外来を中心に関連病院の救急外来、内科、外科、小児科、産科、精神科、そして初めての訪問診療も体験した。こうした経験を通じて総合診療の幅広さや面白さとやりがいを実感した。

 

さてC&CH協会は、こうしたコミュニティホスピタルとそこで活躍する総合診療医を応援している。すでにいくつかの地域では、C&CH協会の支援で、コミュニティホスピタルが立ち上がっている。

 

たとえば東京都台東区にある同善病院(45床)は、回復期リハと在宅療養支援病院の機能を持つ病院で、クリニックも併設している。しかし一時期、医師やスタッフの人材確保が安定しない時期があり、提供する医療が地域ニーズから乖離し、経営も悪化した。こうしたなか2013年よりC&CH協会支援の下経営体制を一新。リハビリ機能を再強化し、クリニックについても総合診療医を院長に迎え入れ、地域ニーズに応えられるようにした。そして22年4月に在宅医療の経験のある総合診療医3名を迎え、地域貢献の一環として「あおぞらカフェ」も開設し、地域住民に密着したコミュニティホスピタルとなった。

 

 

C&CH協会ではこのように、中小病院に総合診療医の派遣、総合診療による病院経営の改善の支援などをしている。総合診療による病院経営改善にご関心のある方はぜひHPを訪ねてほしい。

 

 

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

 

 

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