介護施設運営において業界を牽引するSOMPOケア(東京都品川区)。生産性向上に向けたデータ活用や居住系施設全拠点での子ども食堂展開、他社・地域との協業によるまちづくりなど、多様な取り組みが注目を集めている。同社の戦略や今後の展望について、鷲見隆充社長に話を聞いた。

 

 

SOMPOケア
鷲見社長

 

 

居宅・訪介・訪看「ステーション化」推進

 

 

――デジタルテクノロジー活用の現状は

鷲見 データを活用した多様なソリューションを生み出す基盤「介護リアルデータプラットフォーム」の構築に着手したのが2020年。22年度は、テクノロジーやデータを活用し全社で「未来の介護」を実現していくために、各現場にそれを伝えるべくタウンホールミーティングを実施している。

現場で働くすべての職員との対話を目指し行っているもので、現在約6500人と直接もしくはオンラインで話をした。全職員数は約2万5000人いるため、今後2年以内にこのミーティングを完遂し、限られた人材で最適なケアを提供するためのデータ活用の必要性と導入による方向性を、全員と共有していく考えだ。

 

利用者1人につき600ほどのデータがあり、当社のサービスを利用する約8万人分のデータ分析を行う。これを活用し最適なケアを提供していくためには、全職員の考え方を統一する必要がある。まずは看護師やケアマネジャー、管理者に向けた研修を進めている。また、先行してデータをすでに活用しているホームがモデルとして複数あり、これを全拠点に展開していくイメージだ。

 

将来的には訪問系サービスもLIFE加算の対象になる可能性を踏まえ、「未来の介護」を在宅でも提供できるようにするためのICT化に取り組むことも視野に入れている。

 

 

 

――今後の事業戦略の柱は

鷲見 居宅介護支援と訪問介護、訪問看護を1拠点で展開する「ステーション」化。地域によっては、これに定期巡回・随時対応型訪問介護看護や福祉用具などの事業も組み込み、居住系施設との隣接・併設も進めていく。

このモデルの拡大に向けて訪看の新設に注力しており、今年度の在宅系事業所開設計画42ヵ所のうちすでに26ヵ所開設している中で、16ヵ所が訪看となっている。なお、居住系施設の開発目標は、21年に掲げた「25年までに33棟新設」を維持しており、今年度1棟を開設。さらに11案件が現在進行中だ。

 

 

社会課題解決へ 世論巻込み変革

 

 

――大手デベロッパーや地域企業と連携した「まちづくり事業」も

鷲見 「横浜市栄区プロジェクト」では、東急不動産が手掛ける大規模分譲マンションの隣接地にサ高住(74室) を開設。訪問介護・看護、定期巡回、デイを併設している。4月に開設し、11月に満室になった。また、仙台市泉区の「泉パークタウンプロジェクト」においては、三菱地所が中心となり手掛けるまちづくりの一環として、24年度に有料老人ホーム(72室)を開設する。

 

 

――保険外サービスについては

鷲見 自費のコンサルティングサービス「Iki GUIDE(いきガイド)」を、世田谷区の店舗で行っている。要望や困りごとに合わせた多様なサービスをオーダーメイドで行うもので、基本料金は30分3300円。介護保険では賄いきれない「健康寿命の延伸」「介護(認知症)予防」「生きがい支援」などの観点でサービス開発を行うことで、新市場を開拓し中長期的な成長につなげるとともに、介護給付費の削減や「幸福寿命」の延伸に貢献したい。

メイン領域の介護保険サービスと、生活に潤いをもたらすサービス、そして高齢者本人が持つ能力。この3つの組み合わせで、生活全般を支えるサービスが完成すると考える。

 

 

 

――子ども食堂の運営にも乗り出した

鷲見 今月末までに、当社が運営するすべての居住系施設約450ヵ所で「SOMPO流子ども食堂」を開始する。子どもは無料で、1ヵ月に1回・10食前後提供したとして、月に約5000食、年間約6万食を提供できる。10年あれば約60万食の提供が可能だ。

この取り組みを始めてから、ボランティアや社会福祉協議会など地域とのつながりが強くなった。事業を通し、子どもが介護職と触れ合う機会を作り、身近な職業と捉えてもらいたいとの思いがある。

 

22年の出生数は80万人を割ると言われる中、20年後に介護人材になる子どもはどれほどか。業界を持続可能かつ魅力的な産業とすべく、社会を変えていかなくてはならない。

 

 

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