4月から、「ケアプランデータ連携システム」(以下・システム)の本稼働が予定されている。ケアマネジャー個人を会員とする職能団体、一般社団法人日本介護支援専門員協会(東京都千代田区)の七種秀樹副会長に同システムについての期待や、ケアマネジメントの質向上に向けた協会としての活動について話を聞いた。

一般社団法人日本介護支援専門員協会
七種秀樹副会長
厚労省と協力 活用法を周知
――業務効率化は業界の課題となっている。協会としての取り組みは
七種 機械でできることと、人間でしかできないことを切りわけるのは重要だ。機械ができることについてはICT活用が進むよう、セミナーなどを開催し先進的な取り組み事例を共有するなど情報発信を行ってきた。
今回のシステムは、「サービス実績を介護ソフトへ手入力する」といったような、20年来変わらなかった業務を効率化するもの。これまで、システムベンダーの異なる介護ソフト間は連携が制限されることがあった。数年前に厚生労働省が、「異なるベンダー間でもデータ連携を容易にするケアプラン標準仕様」を示したときから、生産性向上に向けた改革が徐々に進んできた。今回のシステムは、生産性向上をより推進していくきっかけになるだろう。
――システムが稼働するとケアマネジャーにどのようなメリットがあるか
七種 従前、各種書類を郵送・FAX、人によっては事業所まで行って手渡しで共有していた。厚労省によるとシステムを介すことで、共有にかかる時間が3分の1に削減されるという。つまりケアマネジャーが利用者に向き合う時間が増える。利用者と直に接することで、表情や声色、顔色など、人間でしかわからないことをつかめる。
21年報酬改定で、ケアマネジメントの逓減制の要件が45名まで緩和された。これによってケアマネジャーが従来と比較して、より多くまたは広い地域の人々を担当することもあり得る。システムにより業務が効率化されれば、「ケアマネ難民」などと言われることもある、中山間地域の人々の支援が可能だ。
また、ケアマネジャーの担い手確保にも好影響をもたらすだろう。
――システムの普及をどのように進めるか
七種 システムについて事業者の理解が進んでいない。まずは厚労省など関係機関と連携して説明会などを開催し、情報発信を図る。現状では、単にケアプランデータを電送するだけのシステム、といった認識が広まっているのが正直なところ。写真や動画など、文字情報を補足する各種ファイルも一緒に送ることができるなど、上手な使い方を発信したい。
併せて、システムは居宅介護支援事業者とサービス提供事業所の両方に導入されていないと意味がない。サービス提供事業所が年間利用料をどのように思うかは気になる部分。費用面など関係団体へ理解を求むお願いなどを通じて、働きかけていく必要があるだろう。
――協会では業務効率化の推進に加えて、ケアマネジメントの質向上を重要なテーマとして掲げている
七種 現在、ベテランが持つ経験・知識を、次の世代へ継承することに取り組んでいる。まず、ベテランの経験・知識の言語化をスタートした。協会の100人のベテランケアマネジャーが書き出した言語情報を、ほかの300人のケアマネジャーがチェック。基本的知識、発展的知識に分類、整理する作業を行っている。
これらは、ケアマネジャーの技術の継承や実践的なスーパービジョンの構築、協会が実施している生涯学習などに活かしていく。
――24年改定に向けた動きについては
七種 次のトリプル改定について、コロナ禍で財源が逼迫する中で楽観視はできない。居宅介護支援事業所の収支は厳しい状況が続いている。中立・公平性を担保するために、経営的に自立できなければならないと認識している。
今回論点の1つになった利用者負担の導入については、介護保険の根幹を成す「中立・公平」を揺るがす可能性がある。今後も、従前どおりの運用となるように主張していく。