東京商工リサーチ(東京都千代田区)は1月11日、2022年の「老人福祉・介護事業」倒産を発表。倒産は介護保険制度が始まった00年以降最多となる143件(前年比76.5%増)を記録した。長引くコロナ禍と物価高などが影響したものと見られる。新型コロナ関連倒産は、前年比5.7倍の63件と急増した。
要因は複合的でケースごとに異なるが、新型コロナウイルスの感染拡大のインパクトが大きいと見られている。これに伴う高齢者のサービスの利用控え、家族の在宅勤務の定着による需要減なども、事業者の経営を圧迫した。
物価高騰の影響も、重くのしかかった。人手不足や競争の激化といった既存の要因にこれらが加わって、倒産件数を押し上げた。
業種別では、デイサービスのステップぱーとなーとグループ31社の連鎖倒産が件数を押し上げた「通所・短期入所」が69件(前年17件)で最多。次いで、「訪問介護」も50件(同47件)と増加した。また、「有料老人ホーム」は12件(同4件)で、大型投資を回収できず資金繰りに行き詰まる例もあったと見られる。
原因別では、大手との競合や利用控えなど販売不振が80件(前年比48.1%増)が最多。次いで、大型の連鎖倒産が発生し、他社倒産の余波が38件(同1800%増)と前年の2件から急増した。ほか、事業上の失敗などの放漫経営が9 件(前年同)、既往のシワ寄せが7件(同12.5%減)、設備投資過大が5件(同25.0%増)で続く。
負債額別では、1000万円以上5000万円未満の88件(前年56件)が最多。次いで、1億円以上5億円未満が26件(同6件)、5000万円以上1億円未満が24件(同14件)の順。負債1億円未満が112件と全体の約8割(構成比78.3%)を占め、小規模の事業者が中心となっている。