「健康な人も対象に」と東京、毎日

 

かかりつけ医問題が12月23日の社会保障審議会医療部会で大筋の結論を出した。「かかりつけ医 法定化」(産経新聞)、「制度整備を了承」(朝日新聞)など翌日24日の各紙は厚労省提案の骨格案を了承したと報じた。

 

東京新聞は29日に川崎市の診療所で大橋博樹院長にインタビューして「健康な人 対象外は間違い」と骨格案の問題点を引き出した。「かかりつけ医は予防や検診、相談など病気でない時の関係も重要」と本質論を院長の言葉できちんと伝えている。

 

毎日新聞は同日、「かかりつけ医 実効性は未知数」と疑問を投げかけた。やはり対象者を慢性疾患の高齢者に絞っていることを突いた。対象者への書面交付については「将来的な診療を約束するものではない」との厚労省の消極姿勢を明らかにした。
草場鉄周・日本プライマリケア連合学会理事長の話として「第三者が評価する認定制度を設けるべき」と核心に触れる批判もあり、いい記事だ。

 

 

1月9日の日本経済新聞は「『家庭医』を禁句にするな」「武見太郎の遺志を学ぶ時」と、同部会の抵抗勢力の日本医師会の内情を明かす。かつて武見会長は家庭医の養成を重視していたと説き起こし、厚労省も同様の考えだったと言う。

今では、「厚労省内で家庭医は禁句になっている」「日医におもねった法案を準備する」と弱腰を指弾。問題の根は深く、歴史的な経緯がよく分かる記事だ。

 

 

朝日新聞は12月30日に「島田陽子さん 区が2週間後に火葬」と有名俳優の「ひとり死」をスクープした。身寄りがいても頼れない世相を象徴する死。読者の関心が高い1人暮らし高齢者の終活問題を浮き彫りにした。

 

 

1月6日の日経新聞は「ヘルパー『還暦でも若手』」「60歳以上4割弱」と訪問介護の実態を伝えた。「低賃金で若者集まらず」と理由を明かし、低賃金なのは「労働組合がないため」と識者談話で指摘する。もっともな論旨だ。介護業界の労働組合問題を掘り下げて欲しい。

 

 

コロナ死者が6万人を超えたが、その年齢別内訳を厚労省の公表数字から転記したのは7日の朝日新聞だけ。本文で「80代以上が約68%、70代が約20%」と記すが、白抜きの目立つ見出しは「死者 最速ペース」と年齢には触れていないのが残念だ。
テレビを含めた各種メディアは、死者の9割近くが70代以上という事実をほとんど知らせない。欧米のコロナ対策の出発点は「死者は高齢者が大半」という認識にあるという。

 

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

 

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