一般社団法人コミュニティネットワーク協会(東京都豊島区)は豊島区および多摩ニュータウン松が谷地区で、空き家を活用したセーフティネット住宅や地域交流拠点を整備、運営している。自治体と連携し、持続可能な支援の在り方を探りながら、多摩ニュータウンで新たな交流拠点の整備も進める。渥美京子理事長に話を聞いた。

渥美京子理事長
――豊島区でのプロジェクトについて
渥美 池袋駅徒歩圏内で、セーフティネット住宅を2ヵ所、交流拠点1ヵ所を運営している。住宅は2ヵ所とも入居対象者を低所得者など住宅確保要配慮者に限定したセーフティネット専用住宅だ。
それぞれ、戸建てのシェアハウス型(全4室)とマンションのワンルーム型(全6室)。空き家のオーナーとの交渉に始まり、改修なども当法人主導で行った。開設後は居住支援法人として、見守りなどの生活支援や生活保護受給のサポート、交流拠点を通じた自立に向けた支援などを行っている。現在、入居するのは家賃滞納で不動産オーナーから立ち退き勧告を受けた高齢者や、知的障害を持つ高齢者、ひきこもりの人など。
就労継続支援B型事業所、豊島区通所型サービスBの事業所でもある交流拠点の高齢者サロンには、麻雀などを楽しみに地域の人が集まる。入居者の中にはサロンで働く人もいる。ここでの活動が社会復帰への足掛かりとなり、福祉分野の行政職員として働くことが決まった入居者もいる。
空き家率が13.3%と23区内で最多、借家に居住する単身高齢者も23区内で最多の豊島区は、セーフティネット住宅整備に向けた情報共有や、改修費、家賃の補助金制度運用にも積極的。2ヵ所の住宅の家賃は、4万円の家賃低廉化補助により約3~4万円台まで下げている。
――豊島区での事業をさらに発展させたのが多摩でのプロジェクト
渥美 22年夏にオープンした多摩ニュータウンの松が谷地区の交流拠点「コミュニティプレイスまつまる」は、地域住民が集うサロン、「介護保険を使わない」会員制デイサービス、就労継続支援B型事業所など多数の顔を持つ。加えてトレーニングスタジオ、惣菜店、卓球教室などバリエーション豊かなテナントが入居し、多世代が集える場所だ。豊島区のモデルとは異なり、交流拠点を先につくることで、地域のニーズがより具体的に見えた上で住居整備を進められる。
今後、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの整備を、新規開設も含め行っていく。多摩ニュータウンでの事業は、居住支援、高齢者や障害者の支援に加え、団地再生という大きな役割も担っている。まつまるには大学生が実習に訪れるなど若者との交流も盛んだ。若い世代の住まいも整備していきたい。
――持続可能な事業モデル構築も重要となる
渥美 末永く支援を継続するためには、安定した収益基盤を築くことが不可欠だ。松が谷の交流拠点は、各テナントでの自主事業、介護保険を使わない会員制デイサービス、障害者就労継続支援事業を組み合わせた「3段構造」の収益モデルとしている。現在完成に向け動いている愛宕地区の交流拠点では、介護保険のデイ運営も視野に入れている。
――セーフティネット専用住宅の普及に必要なことは
渥美 不動産オーナーの理解が進む必要がある。セーフティネット住宅への転用に向けたオーナーとの交渉には、不動産仲介業者の理解も鍵。また、空き家の耐震基準適合証明の負担軽減や、空室リスクの補填が国や自治体により行われれば、普及の後押しになるだろう。各自治体の居住支援協議会などを活用し、不動産業界と福祉業界の情報連携を進めるなど、居住支援法人が空き家を見つけやすくする施策も必要と感じる。

「コミュニティプレイスまつまる」の様子