ロボテ(横浜市)の髙橋健一社長が、「ICT×医療×介護」をキーワードに話題の人や企業へインタビュー。今回は一般社団法人日本介護協会平栗潤一理事長に、介護との出会い、業界に対する思いについて聞いた。

 

一般社団法人日本介護協会
平栗潤一理事長

 

 

 

■「早期離職」の課題、改善目指す

髙橋 まずは現在の仕事や経歴を教えてください。
平栗 今はケアステーション大空という会社で介護事業をしています。訪問介護、居宅介護などに加えて、認知症グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅もあります。今年から障害事業に力を入れており、障害者グループホームや就労継続支援B型事業所を開設しました。さらに再生医療研究についても関わっています。ほかには、ファッション関係の協会にも参加しています。

 

 

髙橋 本当に活動が幅広いですね。介護に興味を持ち始めたのはなぜでしょう。
平栗 学校を卒業した時期が2004年、就職氷河期で平均求人倍率が0.68人でした。最終的に入社が決まった会社では、専門学校や社会人向けスクールを運営しており、最初は、医療事務を育成する部門に配属されました。

 

1年間医療事務の職員を育てましたが、介護の教育部門で社内公募があった際に「ノリと勢い」で手を挙げました。その中で介護職は就職後に離職する人も多いことを知り、もっと長く活躍できる環境がつくれないか、という課題意識を持つようになりました。また、介護人材不足を解消するためにはより多くの方に介護を知って頂く機会を作ることが必要だと考えていました。

 

そうした折、介護甲子園のスポンサーをすることになり大会を見に行きました。そこでの熱量に衝撃を受け、懇親会で理事長と色々話をしていたら、次の日電話がかかってきて、「役員をやってくれないか」と言われたんです。 会社はボランティアを含めた副業は禁止だったため、独立起業してまずは人材育成と経営コンサルを始めました。その時に今の会社の立て直しの相談がきまして、現在介護事業を行っているケアステーション大空の代表取締役に就任して介護事業を行っています。

 

 

■赤字事業所からの脱却へ

髙橋 介護甲子園をきっかけに現場に関わっていったのですね。
平栗 当時ケアステーション大空の経営が厳しい状況。離職率は6割ぐらいで、採用しては離職しての繰り返し。まずはチーム作りを行うために介護甲子園で優勝することを目標にしました。

当時30代の若輩者がやって来て、「介護甲子園で優勝する」というので、現場は最初、白けていましたね。管理者から文句も言われました。そこから職員とコミュニケーションを取り始め、目標に向かっていきました。最終的に目標を達成し、離職者は現在ほとんど出なくなりました。その後、理事会にて理事長を拝命し現在に至ります。

 

 

髙橋 人材定着が進んでいる事業所は少数です。
平栗 人手が足りない時に採用すると育成する時間もなく、サービスの品質や職員のモチベーションも上がらず、離職率が高まります。定着は、人手が十分な時に採用し、「上りのエスカレーター」の状態の時に投資の考え方を持ち事業拡大できるかがポイントだと思います。

 

 

■日本の介護を世界に発信

髙橋 25年の大阪万博に関わられると聞いています。世界に向けどのようなことを発信しますか。
平栗 日本の介護と他国の介護で最も異なるのは、「おもてなしの心」と「自立支援」という考え方が日本にはあるという点です。中国の介護関係の方と話す機会があり、「お金を払って介護施設に入っているのに介護施設でなぜリハビリサービスをする必要があるのか」と尋ねられたことがあります。

 

大阪万博にて、日本のおもてなしと自立支援の両面を体験して頂く機会を作り、日本の介護の素晴らしさを世界中に発信していきたいと考えています。

 

 

 

ロボテ髙橋健一社長

東京外国語大学卒業。米国留学後、ユニリーバなどで経験を積む。父親の病をきっかけに、高齢期における社会課題の解決を志す。ベネッセスタイルケアの企画経験を経て2014年にアカリエを設立。21年に、同社の「HRモンスター」事業など分社化、robottte(ロボテ)を設立した。

 

 

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