社会福祉法人悠々会(東京都町田市)は住宅確保が困難な人を支援する居住支援法人として東京都より指定を受け、「あんしん住宅事業」を実施している。1年間で約150件の相談に対応。本人が自立的な生活を営むための住宅確保に加えて、見守りや買い物支援、就労支援も提供する。

 

 

 

悠々会では従前より、ボランティアセンターの設置やNPO法人などの運営サポート、一人親世帯に弁当を届ける「おうちでごはん」事業など、地域住民の課題解消に取り組んでいる。あんしん住宅事業も、そうした活動の一環として位置付けられている。

 

入居者は各種サービスを受けることもできる
(出所:法人HPより)

 

 

基本的な仕組みとして、まずは市内の高齢者など住宅確保要配慮者に対し、希望をヒアリングした上で借り手が見つからない賃貸物件をマッチング。悠々会がその部屋を借り上げてサブリースするというもの。身寄りのない人、保証人がいない人でも部屋を借りることができ、物件のオーナーは借主が法人であるため家賃滞納や緊急時の対応などの不安を解消できる。

 

 

町田市には築年数は古いが、3~4万円ほどで借りられる部屋も多くある。そこに見守りなどの各種支援にかかる費用を加えて家賃を5万円ほどに設定。生活保護受給者でも入居可能だ。

 

悠々会の事業地域である町田市は、市内に大学などが多く、学生向けのアパートなども多数ある。近年、学生数の減少に伴いそれらの空室が増えているという事情もあった。そこで、空室を活用し、居住支援を通じて高齢者などが抱える課題解消に乗り出すこととなった。

 

居室には民間警備会社の24時間見守りシステムを導入、定期訪問も行う。買い物、通院などの生活支援や、介護や医療が必要になった際には、法人内の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所と連携し、必要なサービスにつなげる。就労が困難な人に対しては法人の特養で働く機会を設けるといった支援も実施した。

 

 

悠々会では、町田市居住支援協議会からの委託を受け、「住まいの電話相談窓口」も運営。相談員は内容に応じて福祉や不動産関係の団体へつなげる。

 

相談例として、生活保護を受けていた夫婦に対し、離婚後の新居探しを支援したケースがある。家賃の問題に加え、当事者が精神疾患を持っていたこともあり、入居可能な物件を見つけるのが困難であった。こうした事情もあって対応していた不動産会社から悠々会へと相談があったという。

 

同事業を担当する鯨井孝行室長は、「最近では、いわゆる8050問題に該当する相談もあります。障害者支援と高齢者福祉のボーダーを適切につなぐことがより求められていると感じています」と語る。

 

 

鯨井孝行室長

 

同事業は2015年からスタート。取り組みに至った背景には、地域包括支援センターへ寄せられた、近隣トラブルに関する相談があった。「近隣トラブルをきっかけとする相談の対応を通し、支援を必要とする高齢者とようやくつながる、といったケースが多くあります。対応困難になる前の段階でその人に適した住まいの紹介などの支援を行い、在宅で暮らすことのできる限界値を押し上げたいという思いがありました」(鯨井室長)。

 

 

鯨井室長は現在、日常生活が困難になりかけた人を見つけたときに、本人に限らず近隣住民や不動産会社など多方面からすぐ連絡をもらえるよう、行政や関連職種との連携で事業の周知を進めている。

 

 

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