【見守りシステム対談】導入のポイントは利便性と尊厳のバランス/テクノエイド協会五島氏

2022年3月23日

エコナビスタ(東京都千代田区)は睡眠解析技術をベースにしたクラウド型高齢者見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr.」を提供。3月、利用人数が1万台超となった。見守りシステムの必要性、導入するうえでのポイントなどをテーマに、同社の渡邉君人社長と福祉用具に関する調査研究・開発の推進などを手掛ける公益財団法人テクノエイド協会(同新宿区)の五島清国企画部長に話を聞いた。

 

双方の立場から意見交換が交わされた

 

――見守りシステムは時代の流れとともに変化している。

 

五島 当初はマットを敷いて徘徊を検知するタイプだったが、今では生活全般を見守ることができるようになった。利用者の生活をデータとして記録することが求められている中で、効率的に介護ができる使い勝手の良い商品がここ数年で出てきている。また、徘徊・転倒予防とは違う使い方をしている施設も増えている。入居者の情報を1つのプラットフォームに集約させることで、今まで把握できなかったことが可視化できるようになり、単純な見守り支援機器と違うものになってきている。

 

渡邉 以前はセンサーが単一の機能として動作しており、連動して通知するようなものではなかった。スタッフはPHS、スマートフォンなど、複数のデジタルガジェットを持つ必要があり、使い勝手が良いものではなかった。当社では、ユーザーから「トイレの様子を把握したい」「記録システムと連携して欲しい」などの要望に応えて、センサーを増やしたり、記録システムを連携できる機能を追加したりした。

 

公益財団法人テクノエイド協会 五島清国企画部長

 

――見守りシステムを導入するうえでのポイントは。

 

五島 センサーは、赤外線、ドップラーセンサー、加圧センサー、生体信号から心拍をセンシングするものなど多くの種類がある。「アクティブな利用者が多いので生活リズムを把握したい」「要介護度の高い利用者に使用したい」など、施設のニーズ、利用者の状況を考慮して選定する必要がある。選定の時点で誤ってしまうと効果の検証もできなくなる。

 

渡邉 施設ごとにITリテラシーのレベルに違いがある。まずは1種類のセンサーを活用してスキルを上げてから、導入していきたいというニーズもある。利用者の介護度が変化していく中で、トイレに行くことが難しくなったときにトイレセンサーを拡張するなど、状態に合わせて追加することができる。リテラシーの習熟度、入居者の介護度に合わせて拡張する柔軟性が重要だと考えている。

 

五島 介護ロボットを使用することが目的ではない。利用者ごとの課題、サービス提供のために把握したいことなど、課題解決のために使用するものだ。スタッフと利用者の間にテクノロジーが入ってきたときに、利用者の生活様式がどのように変化するのかを捉える必要がある。利用者の身体機能を長期的に見て、寄り添いながらできることを、利用者の視点になって選定するべきだと思う。

 

渡邉 見守りシステムの導入を上手く進めていくには、スタッフにとっての使いやすさだけでなく、利用者の尊厳を守るためのバランスを考慮する必要がある。利用者目線になって考えることが必要だ。見守りシステムをスタッフの1人だと考えている施設は上手く稼働していると感じる。

 

五島 見守りシステムの導入はインフラ整備になるため、簡単に買い替えることができない。建物の状況なども踏まえて導入するべき。トップダウンで選定するのではなく、管理者を配置し、メーカーとの窓口、現場での使用状況の共有など、組織として運用準備を整える必要がある。

 

――ICT機器の中でも見守りシステムは導入しやすい。

 

渡邉 記録システムと見守りシステムを比較してみると、記録システムは自分たちで入力する必要があるため、使いこなすまでに時間を要することがある。見守りシステムは誤反応が発生する可能性もあるが、導入すれば稼働し、スタッフの負担が少ないことが、導入が急速に進んでいる一因であると思う。

 

五島 センサーは即効果を体験することができる。適したセンサーを導入せずに誤反応ばかり発生してしまうと、現場も疲労しITを導入する機会がなくなってしまう可能性がある。だからこそ選定は慎重に行うべきだ。

 

エコナビスタ 渡邉君人社長

 

――データ活用における注意点は。

 

渡邉 スタッフには日々のルーティーンがあり、センサーで見える化することで、今まで把握していなかった情報が増えることになり、仕事が増えるように感じるケースがある。見えないことを把握できたことに対し、どのように活用していくか検討する必要がある。

 

五島 見える化により、実際に勤務している夜勤者しか把握していなかったことがデータに残る。安全性の問題や、作業が増えることなどが懸念される場合もあるが、データを活用して業務改善を図っていくべきだ。機器を上手に使いこなしている施設は、役割分担ができており業務の中にデータの活用方法を取り入れている。それを行わないと、経験と勘でやっていたところにいきなり、機器を導入すると疑心暗鬼になり中途半端になってしまう。利用者全員の状況を把握する必要はなく、状態を把握する必要がある利用者もいれば、そうではない利用者もいるため、見守りシステムの業務の役割分担をするべきだ。眠りの深さや日中の活動も点数化できるセンサーもあるため、上手く活用することでケアの質向上にもつなげることができる。

 

渡邉 業務を効率化し、夜勤者を減らすなどの人件費を削減することができるというメリットを、単なる人員削減効果とするのではなく、その分を日勤帯のシフトを1本増やし、より利用者への個別ケアの時間に充てるなどして、施設全体の質を上げるビジョンを持って欲しい。

 

――見守りシステムの活用事例について。

 

五島 介護支援ロボットの利用目的は、基本的にはスタッフの負担軽減が目的で、特養の転倒・転落の防止、徘徊感知、など特養での活用事例が多かった。近年では有老、GHでの導入も増えている。活動量が多い利用者が入所している施設で活用されているのは、クオリティの高い生活情報を把握したいというニーズの現れだと考えられる。その中でも、富山県は医療・介護連携が進んでおり、サ高住でセンサーを上手く活用している事例が増えている。病院と施設で医療情報を共有することで、質の高いケアの提供や、早い段階で医療機関に相談することもできている。

 

渡邉 スタッフが利用者の日常生活をタイムラインで把握できているため、病院とスムーズな連携が取れている。利用者の状態を把握していることにより、緊急搬送で一命をとりとめたという事例が多数挙がっている。

 

施設のニーズにあった見守りシステム導入が進んでいる

 

――データから利用者の状態変化を予測できる。

 

五島 データを読むことで利用者の状況を予測し、早期に異変を感知できるようになってきている。データを集めることで、スタッフの経験則で状態変化を特定できるようになってくるだろう。

 

渡邉 今後、AIの精度が向上してくると、利用者の生活パターンを学習することにより、異なるパターンが発生したときに通知することで、人間の経験則と併せて判断し、状態変化を予測するトリガーになるだろう。人のトレーニングには限界があるため、AIが気づきを通知するさりげないアドバイスが、見守りシステムの新しい形になるかもしれない。

 

――今後については。

 

五島 ICT・デジタル化は必須になってくる。特に経験と勘でやっていたケアの部分がデジタル化されるだろう。データに基づく介護を実践するにあたり、ケアプランの中に見守りシステムの情報を入れるなどし、効果、デメリットを共有、自立支援につながるデータ活用をしていくべきだ。介護負担の軽減ばかりに意識をするのではなく、データ化することで、QOL向上を目指して欲しい。

 

渡邉 介護現場は生活の場であるため、一部を解決でするのではなく、前後も解決する必要がある。切れ目のない生活の場にテクノロジーを入れるため、施設の要望に応えて様々な機能にアップデートする必要がある。サービスがクラウドの場合、ユーザーのフィードバックを取り入れて改善しやすい。施設と密に連携し、ニーズを把握して製品を改良していきたいと考えている。

 

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