高齢者住宅新聞ニュース

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地域に根付く複合施設 愛川町の多世代共生 社会福祉法人愛川舜寿会

2022年7月06日 提供:高齢者住宅新聞

社会福祉法人愛川舜寿会(神奈川県愛川町)が今年3月26日に開設した複合施設「春日台センターセンター」(以下・KCC/同)。1960年代から地域の中心として愛されてきたスーパー「春日台センター」の跡地に作られており、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービス、就労継続支援AおよびB型事業所などから成る。

KCC立ち上げのきっかけは、住民参加型の地域の語り場「あいかわ暮らすラボ」(以下・あいラボ)。

「10年20年先、この町でどう過ごすか」をテーマに、2017年から公民館などを使用して続けられてきたワークショップ「あいラボ」は、多様なゲストを交えてこれまでに24回実施。コロナ禍でのオンラインも含め、延べ1000人以上との語り場を開催してきた。ここで挙げられた、地域の魅力や課題を基につくられたのがKCCだ。

コインランドリー併設

KCCは、GHや小多機、放課後等デイなどの福祉施設でありながら、広場は学校帰りの子どもたちであふれかえる。併設する「春日台コロッケ」のコロッケを小多機の共有スペースで食べたり、施設の通路を使っておにごっこをしたり、地域の親子が縁側で休んでいたりする。コインランドリー「洗濯文化研究所」も併設されており、ここに設置されたカウンター席でコーヒーを飲みながら本を読む人、これが小多機の利用者であったりするのだ。

 

なお、この「洗濯文化研究所」は就労継続支援A型、「春日台コロッケ」はB型の事業所。地元の名物コロッケをつくる仕事や、洗濯・乾燥・畳みまで行う「洗濯代行サービス」で、多様化する地域の家庭を支える仕事を担っている。

また、愛川町は外国人比率が7.5%と県内一多い町。このうち7割はペルーなど南米の人で、学習能力に何ら問題はないにもかかわらず、日本語がわからないゆえに特別支援を受けることになり、マイノリティとして扱われてしまうといった懸念があった。「あいラボにて町の課題として話し合い、KCCに学習の場『寺子屋』をつくった」(馬場拓也常務理事)。寺子屋では、地域の元教諭などがボランティアでこうした子どもたちの学習支援をしている。

KCCが建つ土地の地権者は神奈川県住宅供給公社。「2015年、春日台センターを閉めると聞いて、すぐに公社に企画書を出しに行った」と馬場常務理事は語る。「ここにあったスーパーと、そこに続く商店街。これらは私が少年時代に毎日遊んだ場所であり、どうにかしてまた地域住民の集まるプラットフォームをつくりたかった」。そのためにも、建築を重視した。

一級建築士事務所teco(東京都台東区)主宰の金野千恵氏は、福祉施設という枠にとらわれず、地域に溶け込み人々が自然に居心地よく過ごすことができる場所を、2階建ての木造建築で表現。様々なサービスが詰まった建物でありながら、とてもコンパクトな作りになっている。シンボルでもある、大きくせり出した1枚の庇は「同じ屋根の下、地域のみんなが寄り添って過ごす場所になれるよう」(金野氏)との思いが込められている。