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“働きがい”感じる職場に グループで改革進む 今川医療福祉グループ

2022年12月05日 提供:高齢者住宅新聞

今川医療福祉グループは、茨城県つくば市を中心とする6つの市で介護・医療に関わる事業を展開している。IT活用や高級価格帯の施設展開などを打ち出すことで利用者の獲得につなげると同時に、スタッフが自身の成長を感じられる「働き甲斐のある職場」を構築。人材確保、定着を進めていく方針だ。

職員の専門性向上、ITと接遇に焦点

グループの医療法人社団みなみつくば会(茨城県つくば市)と社会福祉法人筑水会(同)では、介護付有料老人ホーム5棟、特別養護老人ホーム2棟、介護老人保健施設2棟などの入居系の施設と、デイサービス、訪問介護などの在宅サービスを提供。

みなみつくば会の今川美香理事長は、現在グループとして力を入れている取り組みとして「人材教育」を挙げる。「利用者だけでなく職員も含めて、全ての人を大切にするという法人の理念をしっかり根付かせたいと思います」。

つくば市は都心のベッドタウンとして開発が進み、比較的若い世代が多いという特徴がある。筑水会の今川武彦理事長はそれを踏まえて、「そうした人々が働き甲斐を感じられる職場をつくりたい」と語る。

現場では人材の能力開発も見据えて、一部施設から介護のテクノロジー活用を進めている。

まず、見守りシステムを導入し入居者の生活リズムの「見える化」に着手。従前、夜間2時間に1回の巡視を行っていたが、その頻度が減り負担の軽減につながった。そして、スタッフが記録データを分析しケアに役立てるように意識が変化。また、スタッフが医師との打ち合わせ時にデータに基づき説明し、両者間での意思疎通もスムーズになった。

古澤健部長は「5年以内には全施設に見守りシステムを導入すると同時に、そうした機器の扱いに長け、メーカーとも対等に意見交換しながらIT化を進められる『IT介護士』も各施設で見出していくのが目標です」と話す。

ハイクラス有老 人材育つ場にも

2021年5月に開設した介護付有料老人ホーム「サンシャインつくばリゾート」(50室)は、グループとしてはこれまでになかった「ハイクラス」の物件としてブランディングしている。料金は入居一時金2800万~5000万円、月額利用料は22万5000~27万円までと、グループの中では最も高い。

県内ではこうしたハイクラスの施設はまだ少ない。リゾートの名を冠するように、ハード面では天然温泉、シアター&カラオケルーム、リラクゼーションサロン、日本庭園の設置などを充実している。24時間看護師を配置し、医療ニーズが高い人の受け入れも可能だ。また、保険外の外出支援サービスも用意。1時間4000円でスタッフ1人が「付き人」となる。

ここでは、スタッフのレベル向上に積極的に取り組んでいる。全居室に見守りシステムを導入し、根拠に基づくケアを提供。記録など間接業務を効率化した分、入居者と向き合う時間を増やした。日常の会話でその人の趣味嗜向や、考え方を聞くことができるため、終末期に差し掛かった時、ケアの方針を決める重要な材料となる。

教育の時間も確保でき、月1回、接客・接遇を学ぶ研修会を実施。スタッフがせわしなく行き交う風景をなくし、「リゾート」というコンセプトを崩さない雰囲気をつくり出している。

「ここはスタッフが自然に育つ環境です」と溝口尚樹ホーム長は言う。ハイクラス帯の施設であるため、入居者が施設に求めるレベルも高い。一方で、そうした緊張感のある現場で経験を積むことがスタッフのレベル向上に確実につながり、自分の仕事に自信を持てるようになる。

「ここで経験を積むことで、どこの事業所のカバーに入ることになっても問題なく対応できるようになるでしょう」(溝口ホーム長)

22年10月現在、入居者は10名。今後2~3年で満床を目指す計画だ。「グループでは幅広い価格帯の施設を設けるように開発を続けてきました。この施設はその『頂点』に位置づけられます。反響があれば、今後も高級価格帯の施設の新設も視野に入れていきたいと思います」(古澤部長)