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介護大手22年度決算「増収減益」鮮明 コスト増、コロナが影響 今期は改善へ

2023年6月14日 提供:高齢者住宅新聞

各社入居率回復傾向 強み活かし新事業も M&Aは引き続き活発

 

3月期の介護大手上場会社の2022年度決算が出揃った。物価高騰によるコスト増や新型コロナウイルス感染症による第7波、第8波の影響を色濃く受けた当該期において、多くの介護事業者が減益を余儀なくされている。コロナで離れた利用者の再獲得や他業界との人材獲得競争、介護報酬改定を見越したビジネスモデルの構築、保険外サービスを含む新規事業の模索など課題が山積する中、先陣を切る各社の得意分野を活かした多種多様な取り組みは注目だ。

 

 

■RDP新事業開始 訪問系開設加速も/SOMPOホールディングス

 

SOMPOホールディングス(東京都新宿区)の介護・シニア事業セグメントは増収減益。売上高は前年度比137億円増の1498億3400万円、営業利益は同26億8600万円減の83億400万円となった。

 

同社は介護ソフト大手のエヌ・デーソフトウェアを今年2月に完全子会社化している。SOMPOケアが運営する高齢者向けホーム・住宅の入居率は、21年度の91.1%から92.3%へと微増。コスト増を、これら買収効果や入居率改善による増収でカバーしており、純利益は前年同水準の54億円で着地した。リアルデータプラットフォーム「egaku」事業も開始し、23年度売上高1788億円、純利益63億円を見込む。

 

人的資本経営に向けた処遇改善では、介護福祉士資格をもつリーダー職員について年間50万円増額し、看護師同等の年収レベルとすることに奏功。離職率は11.7%と業界平均を下回る。総事業所数(22年度末時点)は居住系468ヵ所、在宅系601ヵ所。今後、訪問看護・介護を中心に開設を加速させる。

 

SOMPOケア
鷲見隆充社長

 

 


利益三本柱に介護 展開エリア拡大へ/ベネッセホールディングス

 

ベネッセホールディングス(岡山市)の介護・保育事業は増収減益。売上高は前年度比4.2%増の1326億8700万円、セグメント利益は同17.0%減の66億5100万円となった。

 

22年度は、高齢者向けホーム・住宅9施設などの拡大による顧客増が売上を伸長。光熱費の高騰及び営業強化に伴う販促費などの増加により減益となったものの、23年度はコロナの影響からの回復により28億円の営業利益増を見込む。売上高についても、拠点増、入居率改善、価格改定などを行い88億円の増収となる見込み。

 

22年度末現在の施設入居率は90.4%、今期末には93.9%を目指す。展開エリアを金沢、広島、熊本にも拡大するとともに、特徴的な新規ホームの開設も行う予定。なお、同社は5月19日、「変革事業計画」を発表。ポートフォリオ戦略を採用し、「コア教育」「コア介護」「新領域」を利益の三本柱としていく。「コア介護」では、引き続き病院・ケアマネジャーとの関係構築やショートステイ体験などを実施。22年度のショート利用者は21年度比91%増の28
63件、うち665件(23%)が長期契約に転換している。

 

ベネッセスタイルケア
滝山真也社長

 

 


■在宅強みに全国へ 多様な新会社設立/セントケア・ホールディング

 

セントケア・ホールディング(東京都中央区)は増収減益。売上高は前年同期比7.5%増の525億5100万円、営業利益は11.4%減の25億3900万円。

 

22年度の新規開設は訪問看護や看護小規模多機能を中心に34ヵ所。新会社としては、ICTを最大活用した訪問介護・看護の「セントケアDX」や、福祉用具貸与等事業を集約した「セントケアりまいん」(事業開始23年5月)、デイサービスと訪問看護を組み合わせた「セントケア・Replus」(事業開始23年10月予定)を設立し、新たなコンセプトの下展開している。

 

成長戦略の「コミュニティNo.1拠点」も17エリアで実施。全国累計33ヵ所となり、収益基盤も構築されつつある。これらによる利用者増に加え、21年に買収した福祉の里が収益に貢献した。同社の看多機の平均稼働率は88.0%と、新設を加速しながら高水準を維持。23年度には88.3%を見込む。

 

セントケア・ホールディング
藤間和敏社長

 

 

 
■M&Aで成長拡大 〝圧倒的差別化〟に/ソラスト

 

ソラスト(東京都港区)の介護事業も増収減益となった。売上高は前年同期比2.0%増の485億3600万円、営業利益は2.1%減の25億2100万円。

 

介護事業所数は15ヵ所増加し、663ヵ所(22年度末時点)に。なお、居住系施設の入居率は92.2%。成長戦略の柱であるM&Aについては、22年度は計画より少なく5件を実施、年換算売上は約27億円となった。コロナで苦戦を強いられているものの、投資時の目線を上回る利益創出に努める考えだ。

 

23年度から25年度の3年間における累計目標としては新規M&Aで180億円超の売上達成を目指す。科学的介護の実践に向けた居住系施設へのセンサー機器の導入などに加え、イノベーションに積極投資を行い、データビジネスを新たな競争力の源泉としていく。

 

ソラスト
藤河芳一社長