【連載 認知症ケアの理想像】「特養の周りに壁は必要か」 社会福祉法人愛川舜寿会 馬場拓也常務理事

2016年10月5日

今回は、「介護業界の人材獲得戦略」をテーマとした著書を持つ、社会福祉法人愛川舜寿会(神奈川県愛川町)の馬場拓也常務理事に話を聞いた。

 

 

――特別養護老人ホームにおける認知症ケアの現状は

馬場 一昔前とは大きく変わってきましたが、それでも入居者が「閉じこめられている」と感じざるを得ない構造の施設は未だ多いと思います。そうした環境で「人間らしく」などと謳っても、本来の自分を取り戻すことは難しいでしょう。

 

 

――どのような支援の方法があるのでしょうか

馬場 ケアには、人的支援と環境からの支援があります。日々の関わりの中で蓄積された、入居者のバックグラウンドや好きな場所などの情報を基に、環境をいかに整えるかが大切です。「畳が落ち着く」という人にホテルのようなロビーをあてがっても意味がありません。

 

 

――貴法人の取り組みを教えて下さい

馬場 当法人が運営する特養「ミノワホーム」では、施設を囲んでいた塀を壊し、地域との隔たりをなくすべく、建築家や大学生らと協働で取り組んでいます。

 

帰宅願望のある入居者が外に出た時、見えるのが塀に囲まれた景色ではなく、緑があり、車が走り、向かいのガソリンスタンドの店員と会釈するような、当たり前の日常が広がっている。このような地域社会に溢れるリソースをデザインとアイデアでケアに取り込んでいくことが、当法人の考える認知症ケアの第一歩です。また、その議論が新しいケアの視点を生むのです。
こうしたデザインの力は介護現場を変えます。福祉従事者には、デザインの視点を持ってもらいたいです。

 

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