公益社団法人日本薬剤師会(東京都新宿区)石井甲一副会長

2016年4月27日

現在、いわゆる「潜在薬剤師」は9万人程いると推測されている。「潜在薬剤師」になってしまう理由はどのようなものだろうか。また、そのような人たちが職場復帰をするためにはどのような環境が必要なのか。公益社団法人日本薬剤師会(東京都新宿区)の石井甲一副会長に聞いた。

 

10年のブランク すぐには埋まらず

 

潜在薬剤師の多くは女性です。結婚をして子育てをしながら仕事を続けるのが難しいという現状があります。子育てのために一度現場を離れますが、子供に手がかからなくなるまで10年程度かかります。

 

その後、復帰を考えますが、製薬メーカーや研究所では10年のブランクがあると技術の進歩に追いつくのが難しいです。そこで、復帰先は自ずと薬局が多くなります。

 

しかし、難しいのが、薬も新しくなり、調剤業務も「薬を出すだけ」ではなくなっていることです。現在は、患者への情報提供と適切な服薬指導が求められています。

 

また、医薬分業が進んでいるため、不適切だと思われる医師の処方に対して疑義照会をすることも薬剤師の重要な仕事になっています。そのため10年の空白期間がある薬剤師が短期間のうちに現場で働けるようになるのが難しくなっています。

 

こうした女性薬剤師の一時的な現場離職を防止するために保育所の整備が急務です。

 

全国的に薬剤師は不足しているので、国も潜在薬剤師の職場復帰を支援しています。2年前の診療報酬改定の際に地域医療介護総合確保基金として904億円が計上されました。この中で潜在薬剤師の復帰支援事業に大きな予算が割かれており、各都道府県の薬剤師会が主体となって現場復帰のための研修などを行っています。

 

薬剤師は「薬」という命に関わる物を扱う仕事なので、単なる技術者ではないという認識を経営者や薬剤師自身にも持ってもらいたいです。研修など薬剤師が安心して働ける環境を整えることが潜在薬剤師の掘り起こしに繋がるでしょう。

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