入居者を「スタッフ」として雇用 金銭で給与
施設修繕・セールスなど経験活かし
高齢者施設の中にはADL維持・改善、認知症予防・進行防止、生きがい作りなどを目的に、利用者・入居者が「働く」ことが少なくない。そして、その対価は館内通貨やクーポンであることが一般的だ。しかし丸竹コーポレーション(大阪府泉南市)が運営するサービス付き高齢者向け住宅では、金銭で給与を支払っているのが特徴だ。
丸竹コーポレーション
「誰しも、高齢者住宅での生活より自宅での生活がいいと思っています。それでしたら『なるべく自宅の生活と同じ環境を用意する』のが高齢者住宅の務めだと考えます」と語るのは同社立花克彦社長。
その考えのもと、5年前に開設された「フラワーホーム」では飲酒や喫煙も可能(自室内の喫煙は電子タバコのみ)、門限はあるが建物玄関にはカギをかけないなど、自由度の高い生活を送れるのが特徴だ。入居者の平均要介護度は2強。比較的元気な人が多い。

同社が運営する「フラワーホーム」
そうした取り組みのひとつが「働きたい人は働ける」こと。ホームと入居者の間で正式に雇用契約を結び、府の最低賃金以上の賃金を労働内容や時間に応じて現金で支払う。現在、この契約で働く入居者は3人。体調や天候などに合わせてホーム運営の補助業務などで週に1~4時間程度働いている。
同社の主力事業は業務用毛布などテキスタイル製品の販売。「元気に働ける人であれば、テキスタイル事業で軽作業についてもらうことも検討します」という。 また、過去にはこれまでの経歴を活かして、ユニークな仕事に就いてもらったケースもあるという。 例えば、大手デパートの外商部で勤務していた経験がある入居者には、業務用毛布のセールスをしてもらったことがあるという。また2018年に大阪府が台風に襲われた時には、フラワーホームの建物にも被害が出たがその修繕は元大工だった入居者にしてもらったそうだ。 「相模原市の障害者施設で入居者大量殺人事件があったときには、介護・福祉施設の夜間のセキュリティの脆弱さが問題視されました。その際には入居者に夜間に守衛として働いてもらったこともありました」
今後も、かつて専門的な仕事、技能的な仕事をしていた人が入居してきた場合には、その人のキャリアに合わせた仕事を臨機応変に用意していく考えだ。 「高齢者になっても、介護が必要になっても、人には尊厳があり、プライドを持っています。『自分の知識や能力を活かして人の役に立つ』ことは、本人の尊厳・プライドを守ることになります」