【介護予防とDX】フレイル健診にIoT 自治体にパッケージで提供
電子カルテなどの医療情報システムを手がけるアルファシステム(秋田県秋田市)は、秋田県内の市町村向けにフレイル健診パッケージ「FROW」を提供。「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業での活用が期待されている。

アルファシステム 佐藤嘉晃社長
センサーで計測、即日結果を提示
同社のFROWでは、歩行や立ち座りテストなど転倒リスクを評価する4種のテスト、体組成測定、舌圧測定などオーラルフレイル測定、タブレット端末を使用したチェックリスト方式の問診を実施する。
測定機器及び問診で用いるタブレット端末はネットワークに接続されており、その結果から自動でレポートを作成。スピーディーに健診を進めることができる。参加人数20人程度であれば、計測からレポート渡しまで約2時間、即日結果が出ることが特徴だ。また、当日の受付、進行、計測、保健師・管理栄養士によるアドバイスなどのサービスをパッケージで提供。フレイル健診を完全に外注可能としている。
2019年より、県内の市町村で実証実験を開始。参加者へのアンケートでは97%が健診の参加を通じて「フレイル予防を今後も続けたい」と回答するなど、好意的な意見も多いという。 佐藤嘉晃社長は「健診後、即座に結果が提示され、アドバイスが受けられる。それがフレイル予防に前向きに取り組もうとする意欲を高めているようだ」と話す。
予防事業進まず 自治体の課題
同社では、FROWが、「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業において活用されることを見込んでいる。 同事業は24年までに健診などのフレイル予防事業を、全国の自治体で実施することを義務付けている。同社によると「予防事業で何をすればいいのかわからない」「フレイル健診を実施したいが、人員が足りない」という声が自治体から挙がっているという。予防事業を実施している自治体でも、「厚生労働省の提示したフレイル問診票によるチェックでは、主観的な回答に留まり、根拠としては弱い」と課題も指摘されている。
「加えて、コロナ禍によりなるべく非接触で健診を実施することも新たに必要となった」と佐藤社長は指摘。「現状、それらの課題にFROWは対応できている。今後は国保のデータと連携し、データをより活用しやすくする予定だ。健康寿命延伸に貢献できればと思う」。 FROWについては、県外の自治体からも問い合わせがある。同社は今後、全国の自治体への販売も計画している。
「不健康」秋田 官民連携で返上
FROWの開発に至った背景には、健康に関する各種指標が示す、秋田県の「健康格差」問題がある。 厚労省が19年に実施した第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会の資料では、都道府県別に平均健康寿命が示されている。
16年時点で秋田県は、男性71.21歳で最下位、女性も74・.53歳で33位と下位に沈んでいる。また秋田県が18年に策定した「第3期秋田県医療費適正化計画」において、15年時点で、1人当たりの医療費が年間36万7000円で全国平均(33万3000円)を上回ると指摘されている。さらに、人口10万人当たりの主な死因別の粗死亡率(厚労省:「令和元年人口動態統計」)では、がん、高血圧性疾患、肺炎が、全国平均を上回っている(表参照)。
その要因として考えられるのが、車での移動が多く運動量が少ない、食塩摂取量が多いなどの生活習慣だ。秋田県が19年に実施した「健康づくりに関する調査」では、65歳以上の1日の平均歩数は全国平均より1000歩少ない。また、塩分摂取量の平均が男性11.7グラム、女性9.7グラムと平均より多い、喫煙率が高いといったデータが出ている。
そのため、県では「健康寿命日本一」を目標に掲げ、市町村や民間団体、企業などで構成する「秋田県健康づくり県民運動推進協議会」を立ち上げるなど、健康増進・フレイル予防への取り組みを進めている。

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