≪コロナ政策 中間評価と緊急提言≫ 第2部 戦略と提案 Ⅴ.2つの距離

2021年2月3日

 

—連載⑤ ニューノーマルは“社会距離”の短縮—

 

今回から始まる第2部ではこれまで4回の分析を踏まえてこれからのコロナ政策を出来るだけ総合的かつ具体的に提案したい。コロナの課題は実は高齢社会の課題であり、それを象徴するソーシャルディスタンスに対抗する2つの距離の考え方を提案したい。

 

 

 

 

 

Ⅴ 2つの距離

 

まずは目指すべきスローガンを提案したい。

 

高齢社会のニューノーマルは「社会距離の短縮」!

暮らしのオールドノーマルにむけ、容認可能で合理的な「予防距離の確保」!

 

 

ここで新しいスローガンの背景となる騒動の出口作戦、収束への行程について述べてみたい。 当初から想定されていた新型コロナウイルス感染症の流行期間1.5〜2年は、実際に当てはめると、早くて2021年の秋から、遅ければ、これまでの他の4つのコロナ感染症は季節性を有し冬に多いことから考えて、2022年の秋以降になる可能性が高い。

 

おそらく現在の罹患の増加は、感染が深く暮らしに地下水脈の様に浸透していっているからである。パンデミックがエンデミック、蔓延性感染症に移行しているのに加えて気候や行動様式を通して暮らしの老弱な個所でぽつぽつ集団感染が発生しているからと考えられる。

 

だとするとこの間、特殊な接待の場、家庭、そして病院介護施設など濃厚接触が避けられない場での集団発生が、出たり収まったりしながらだらだらと長期にわたり続くことになる。事実報道によると、集団発生の場の数が増え、感染経路の不明な例が増え家庭での感染が目立つようになっている。

 

図11

 

 

 

この間のコロナの発生の動きを捉えると、1月半ばに最初の感染が報告されてから3月半ばまでが中国を起源とする第3波で、水際作戦で収束したと考えられる。それにかぶさって欧州起源を中心とする波あわせても1波が起こるが、5月半ばにはいったん終息を見た。

 

しかし6月末からPCR検査陽性者は再び増加しはじめ8月の半ばをピークに比較的急速に減少したが、明らかな切れ目がなく10月の終わりから第3波とみられる増加に転じた。第2波のピークは第3波に比べると2.8倍と大きく増加したように見えるが、実は検査件数も体制の整備や検査適応の緩和により3倍に急増しており、第1波では見逃したようなケースを含んでおり、実際のピークは第1波よりかなり低いものと想定される。

 

 

図12

 

 

 

必要なのは許容できるリスクの現実的〝予防距離の確保〞

 

 

第3波では検査陽性者が今年になってたった10日で倍増した。しかしそれは民間検査センターによる自主検査の増加を反映しており無症状感染者を掘り起こしている可能性がある。1月8日の第2の緊急事態宣言は果たして根拠があるのか問われる。

 

感染が収束するのは一定の集団の多くのメンバーが罹患するかワワクチン接種により、免疫を獲得すること、即ち集団免疫の確立が必要とされてきた。しかし感染が猖獗を極めたイタリアやニューヨークでも検査数の増加による水増しを考えても第2波は急増しており、集団免疫が大きな地域に適応できるか疑わしい。日本では感染者は少なく感染による集団免疫は論外である。

 

ワクチンは正常人に接種するので今開発が完了したとしても、安全性の慎重な確認が必要なうえ、多くの人の接種が2年以内に完了できるとは考えられない。このような選択バイアスとでもいえる見かけの増加や季節性の増加は、今後何度も繰り返される。そのたびごとに最低2年間、「感染予防か経済活動か」と騒ぐのは壮大な無駄である。2つのスローガンを基に、暮しを再構築する必要がある。

 

 

■距離1 高齢社会のニューノーマル〝社会距離〞の短縮

 

〝ソーシャルディスタンス〞は日本社会においては意味不明である。恐らく西洋社会、ソサイエティの話なのであろう。おそらく〝ソーシャルディスタンス〞が現実的に意味する「喋るな」「近づくな」「触れるな」「人を信じるな」「マスクで顔隠せ」「社会的距離を取れ」という行動様式では人の暮らしが成り立たない。

 

図13

 

 

 

むしろ近年都市化の進行によりこのような文化価値がはびこり社会問題化してきている。高齢化社会が希望の星で、社会全体が高齢化することによる、もう一度支えあう価値観、文化を醸成するチャンスととらえられてきた。その原点に戻り新たな高齢社会の正常生活の目標、これからのニューノーマルは〝社会距離〞の短縮でなければならない。

 

 

■距離2 出来る限り普通の暮らしオールドノーマルに戻るために容認可能で合理的な〝予防距離〞の設定

 

さすがに厚労省も社会距離の拡大を意味する〝ソーシャルディスタンス〞という言葉はまずいと〝物理距離〞という言葉に改めるよう勧告してはいる。しかし意味がわからない。これは明確に〝プリベンティブディスタンス〞「予防するための距離」とすべきである。これからの高齢社会ニューノーマルの目標〝社会距離〞の短縮と並んで、コロナ対策の目標に〝予防距離〞を置くことを提案したい。合理的で容認可能な距離により昔の生活、オールドノーマルに帰ることができる。そのための根拠づくりに、3つの課題の研究を提案したい。

 

これまでの震災や原発事故での日本人の行動様式を見て、社会環境と個人の行動選択をリスク1か0で考える根強い文化があるように思える。確かに日本の場合は、歴史的にリスクが自然災害中心で対象が農業と想定されてきたため、人為による管理が難しく、全て受け入れるか拒否するかの2択が行動原理だったかもしれない。

 

それに対して西洋では戦争などの人災が主で対象が商業と想定されることが多く、リスクを取れば得られるものもあると考える、トレードオフ、得失の文化が根付いているように思われる。日本でもコロナ騒動を好機として、全てか無か、感染者は非国民といった考えを改め、合理的で容認可能なリスクの考え方やそれに基づいて選択するトレードオフの考え方を学ぶべきである。

 

 

この予防距離を現実化する為、社会の中での層別化を目指す2つの戦略、それを支える2つの研究の提案を次回に述べたい。

 

 

 

一般社団法人未来医療研究機構 長谷川敏彦代表理事

(プロフィール)

アメリカでの外科の専門医レジデント研修など15年の外科医生活、ハーバード大学公衆衛生大学院での学習研究を経て1986年に旧厚生省に入省し、「がん政策」「寝たきり老人ゼロ作戦」を立案。その後、国立医療・病院管理研究所で医療政策研究部長、国立保健医療科学院で政策科学部長。日本医科大学で医療管理学主任教授を経て、2014年に未来医療研究機構を設立。現在、地域包括ケアや21世紀のための新たな医学、公衆衛生学、社会福祉学そして進化生態医学創設に向け研究中。

 

 

 

 

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