“仕事付き”高齢者専用シェアハウス 空き家を行政がマッチング
一般社団法人生涯現役ハウス(東京都江戸川区)は3月、空き家を活用した単身で自立の高齢女性専用シェアハウス「仕事付き高齢者住宅フローラ西一之江」(同)を開設した。住宅の確保が難しい単身高齢者を受け入れるほか、就労希望者には仕事探しのサポートを行うのが特徴。5月を目途に入居が始まる予定だ。

仕事付き高齢者住宅 フローラ西一之江
築30年戸建て 空き家改修で
フローラ西一之江は、住宅街にある2階建ての築30年の戸建て住宅をシェアハウスに改装したもの。空き家を活用したシェアハウスの運営を手掛けているブラザーフッド・アンド・カンパニー(同新宿区)が管理業務を受託する。
建物の2階部分が入居者の個室となっている。居室は洋室2 室(13.6及び14.7平米)、和室2室(8.8及び16.2平米)の4部屋。1階部分はキッチン、リビング、風呂などの共用部。テレワークなどに使用できるワーキングスペースも用意されている。インターネットは無料で使用可能だ。
個室にはエアコン、共用部には洗濯機、冷蔵庫などの家電を完備。生活上の悩みについては、「LINE」を活用し、いつでも生涯現役ハウスに相談できる体制としている。賃料は共益費込みで月額4万6500円から6万7000円。
入居時に無職でも部屋を借りられるが、仕事を探す意思があることが条件となっている。その場合は、元気高齢者の職業紹介を手掛けるかい援隊本部( 同品川区) の協力で、有料老人ホームの居室内清掃を行う生活支援スタッフなど、かい援隊本部の求人を紹介する。
持田昇一代表理事は、「私は現在60代だが、数年前に都内へと引っ越しをする際に、賃貸への入居を断られ住居の確保に苦労した。その経験から高齢者の住まいの課題を解消したいという思いがあった」と語る。
また、高齢者などの「住む場所」の確保が難しい人がいる一方で、現在、「住む人」がいない空き家が社会問題となっていると指摘し、「その2つを同時に解決できることに気づき、今回の取り組みに至った」とした。
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持田昇一代表理事(右から3番目)と田島勉課長(同2番目)
シェアハウスへの改修費用は300万円で、生涯現役ハウスの基金から拠出した。その内、100万円は江戸川区の「空き家改修工事等助成事業」の助成金、残りは家賃収入からの償却で回収していく。
10%が空き家 対策急ぐ行政
建物は、江戸川区が空き家問題などへの対策の指針を示す「江戸川区空家等対策計画」の一環として設置した「公的活用バンク」に登録されていたもの。
オーナーの女性は、両親の死去に伴い、空き家となった実家の取り扱いに苦慮していたことから、公的活用バンクに登録したという。
同区は対策方針を定める以前の2013年時点で、住宅数は34万、その内10%が空き家になっていると試算している(図表参照)。
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総務省『住宅・土地統計調査』(H25)における、江戸川区の空き家の状況 出典:江戸川区空家等対策計画(2016年)
特に、旧市街地の狭小住宅などが空き家になるリスクが高いとしている。区では空き家対策として、所有者と利用者のマッチングを進めてきた。
同区の都市開発部住宅課の田島勉課長は「今回は、空き家の活用に合わせて、住まい確保、生きがいづくりを同時に行う取り組みとなっている。区の福祉増進に資するだけでなく、全国的にも先進的なものであると認識しており、注目している」と期待を寄せた。
持田代表理事は今後、フローラ西一之江をモデルに全国でこの仕事付き高齢者向けシェアハウスを展開していく方針だ。「高齢者施設などとも連携して、身体状況に応じて、自宅からフローラ西一之江、次は高齢者施設というように住み替えながら、最期まで地域のコミュニティの中で暮らせる環境を実現したいと思う」と語った。