介護・看護従事者へエール 曲に載せる「リアルな今」/嘉門タツオ氏

2021年5月17日

「ヤンキーの兄ちゃんのうた」「鼻から牛乳」など、オリジナリティーあふれる曲を生み出してきたシンガーソングライター・嘉門タツオ氏。くすりとさせられる替え歌でも知られる氏が今、その笑いを封印したかのようなオリジナルソングを配信している。過酷な医療現場で働く看護師に思いを馳せた「看護の現場」。そして介護者に贈る「おかげさま」だ。

 

 

嘉門タツオ氏 シンガーソングライター

 

 

 

──昨年来、看護や介護がテーマの新しい歌を作られています

嘉門 じつは僕の伯母がナイチンゲール記章もいただいた看護師(*日本赤十字看護大学川嶋みどり名誉教授)で。著書の「看護の羅針盤366の言葉」に触発されたんです。コロナ禍、医療現場で奮闘する人たちの姿と伯母が重なってこれは歌わねばと。

 

 

──次いで介護従事者に向けた歌を

嘉門 これは介護施設の入居者の方が楽しむオンラインツアーを企画する会社から依頼を受けたもの。お伊勢さん参りのツアー動画のエンディングに流れる歌で、介護してくれる人への感謝を歌いました。

 

 

──想像して歌詞を?

嘉門 僕の母親は現在、施設に入居しています。5〜6年前から病院と施設を行ったり来たりしている状況ですが、母はどう思っているんやろうなと思いを巡らせました。

 

 

──ご家族の件で介護への見方は変わった?

嘉門 変わったも何も。全然知りませんでしたね。家族という当事者の立場になって、初めて知る。世の中の大半の人はそうでしょう。要支援と要介護の違いもわかりませんでしたから。当事者にならないと知らない世界、だからいざとなると不安になる。そういうことも含めて、歌に載せて伝えたいと考えるようになりました。

 

 

 

昨日あったことを今日歌う

 

 

──笑いは封印ですか

嘉門 震災時などには世の中を明るくしたいと応援やメッセージを込めた歌を作ったり。終活を考える「HEY!浄土」のような笑えるけど笑いづらい歌なども作ってきました。叙情ではなく叙事。〝昨日あったことを今日歌う〟、そういうスタンスをずっともち続けてきたんです。

 

 

──昨日今日、変わったわけではない

嘉門 一昨年、還暦を迎えまして。コロナ禍で活動が制限されたこともあって「作るべき領域」については歌っていこうという思いがより強くなった気がします。歌いたい、歌わねばと思うことがたくさんあった年でした。

 

 

──嘉門さんの中で介護や看護が作るべき領域となった

嘉門 コロナ禍、医療・介護に携わる方がホッとする、介護を受ける側も少しでも明るくなる。そういう歌を作ろうという思いが溢れてきたんです。中には、なんもわからんやつがなんやという意見もあるとは思うんです。それでもいい。その領域を歌って皆さんに「その通りや」と思ってもらうには、正直スキルもいる。声の出し方、ギターの音の運びの緩急、歌う時の表情。いかに分かりやすく、伝わりやすく、届けるかをずっとやってきた。だからこそ、今回の新型コロナ禍においても、歌わねばと思ったんです。問題提起やと思っているんです。

 

 

──ご自身の今後は

嘉門 80歳になっても歌っていきたい。80歳の人としての歌を歌いたい。徐々に弱ってゆく親の現状も、いずれは自分自身のことも歌う。これは自分の仕事やな、と。

 

 

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通



<スポンサー広告>