【介護報酬改定】居宅介護支援 逓減制見直しは生産性向上の試金石/斉藤正行氏
【介護報酬改定】居宅介護支援
引き続き主要サービスに関する改定動向について、今回は【居宅介護支援】をテーマとします。 ケアマネジャーは、在宅サービスの改定項目を全て把握しなければならない立場であり、過去最大規模の見直しとなった改定であることからも大きな影響を受けたことは間違いありません。
基本報酬単位は、改定率が1.62%〜1.89%のプラスとなり、全体改定率の0.7%のプラスと比較しても、大きなプラスとなりました。改定の中身を、注目点に絞って解説したいと思います。まず、目玉の1つが『逓減制の見直し』です。今回、「一定のICT(AIを含む)の活用」又は「事務職員の配置」によって、逓減制の適用が45件以上の部分からとなりました。
重要な点は、「適切なケアマネジメントの実施」が目的ということで、ICTを活用して取扱件数を5件増やしても、業務工数が増え、ケアマネジメントの質が低下しては本末転倒です。単なるICT活用ではなく、事務負担を軽減させてケアマネジメント業務に専念できる体制を構築した上で取扱件数を増やすことが必須です。
だからこそ、事務職員の配置によって同様の目的を果たすことも要件となったのです。また、今後の介護業界において重要なテーマとされている『生産性の向上』に向けた試金石ともなる意義深い見直し項目の1つです。
さらには、これまで大きな手間でありながら評価されてこなかった「通院時情報連携加算の新設」「看取り期におけるサービス利用前の相談・調整等について利用者の死亡時の算定可への見直し」「介護予防支援の委託連携加算の新設」の3つは、現場からも、評価される見直し項目であると言えます。
他方で、ケアマネジャーにとって頭を悩ます見直しは、集合住宅等における過剰サービス対策として導入された項目です。具体的には、ケアプランにおける訪問介護・通所介護等の各サービスの利用割合と同一事業者の提供割合を、利用者に説明を行うとともに、公表が義務化されたことです。趣旨は理解できるものの、膨大な手間を生じさせるもので、現場には不満の残る見直しです。
また、「生活援助の訪問回数の多い利用者等のケアプランの検証」「事業所と同一の建物に居住する利用者のみらならず、外部の利用者へのサービス提供」の見直しでは、自治体及び居宅介護支援に対して適切なケアマネジメントであるか否かについて、従来以上の点検や検証が強く求められることとなりました。
次期改定においては「利用者への自己負担の設定」が再度論点となると予測されることから、今後も注目していきたいと思います。
斉藤正行氏 プロフィール 2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。