男性介護者、集える場 多職種チームで運営
独居や介護者の男性を対象として、医療・介護に関する講義や、調理実習などを行う「男の介護教室」。現在、宮城県内で7ヵ所、全国15ヵ所で開催されている。 2014年、宮城県石巻市での開催がその始まりだ。教室の立ち上げを主導した、石巻市雄勝歯科診療所(宮城県石巻市)の所長を務める「男の介護教室」・河瀬聡一朗代表に話を聞いた。

河瀬聡一朗代表
「食」テーマの教室
――「男の介護教室」のコンセプトは
河瀬 独居の男性や、自宅で1人で家族の介護を行う男性が孤立しないためのコミュニティ作りです。地域の保健師やケアマネジャー、医師、歯科衛生士など、多職種でチームを組み、教室を運営しています。介護の知識や、生活するためのスキルを身に着けてもらえればと思い、前半は講義、後半は調理実習の構成としました。
――具体的には
河瀬 前半の講義は、「食べることは命の源」との考えから、食事形態や食事の姿勢、口腔ケアなど「食」にまつわる内容が中心です。介助やおむつ交換などの実習も組み込んでいます。調理実習では、管理栄養士監修の簡単で高栄養な料理を作り、食べながら栄養についてディスカッションを行います。参加者の一体感を演出するため、「男技(おとこぎ)」と文字の入ったお揃いエプロンを用意するなどの工夫もしました。 開催頻度は、月に数回、数ヵ月に1回など開催地によって様々です。石巻教室では、コロナ前には2〜30名が参加していました。
――立ち上げの経緯は
河瀬 私はもともと松本歯科大学(長野県塩尻市)で働いていました。東日本大震災の発災時、医療支援を行うために石巻を訪れ、12年に当地で歯科診療所を開所、現在に至ります。
外来や訪問診療を行うなかで、自身も疾患を抱えながら1人で家族の介護をする高齢男性の姿を目の当たりにしました。認知症の奥様との2 人暮らしで、精神的に疲れ切ってしまい、夜も眠れず食事も満足にとれていない男性もいました。 男性は周囲に助けを求めたり、コミュニティに参加することが苦手な場合が多いと感じます。彼らがSOSを発し、地域の人とつながることができる場所が必要だと思い、教室を立ち上げました。
――今後の展望は
河瀬 多職種がいかにつながって地域の人を支えていけるか。「男の介護教室」が、それを医療、介護関係者の方々に考えてもらえるきっかけになればと考えています。

調理実習の様子/ホットプレートでピザを作る