国立病院など病室Wi-Fi整備2割 #病室WiFi協議会調査 病室での孤独解消を

2021年10月21日

がん診療連携拠点病院始め国立病院など合計563医療機関のうち、全病室、無料でWi-Fiを使用できるのは約20%に止まることが、有志による民間団体「#病室WiFi協議会」の調査で判明。同協議会が6日、記者会見で結果を公表した。

 

 

協議会メンバーの笠井信輔さん(右)と古賀真美さん(左)

 

 

 

病室でのWi-Fi環境づくりを推進する協議会のメンバーは、フリーアナウンサーの笠井信輔さん含め9人。設立のきっかけは、日本骨髄バンク評議員の大谷貴子さんが自身や周囲の実体験を通じて感じた病院でのWi-Fi環境への疑問をオンライン講演会で呟いたことだ。これに賛同した個性豊かなメンバーが集結。毎週定期的に行う勉強会に加え、患者と家族、病院、通信事業者、電子カルテベンダーなど、関係各者へのヒアリングを精力的に行い、活動を推進してきた。

 

メンバーの1人であるNPO法人キャンサーネットジャパン(東京都文京区/以下CNJ)常務理事の古賀真美さんは、その重要性を訴える。「受診後、即入院となり、自分自身の状況について納得する間もないまま入院治療が始まってしまうこともある。Wi-Fi環境があれば、病室から情報収集をしたり、家族とコミュニケーションをとることができ、治療に前向きになれる」と重要性を訴える。

 

 

活動初期に、♯病室WiFi協議会がCNJと「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」と協力して行ったアンケートでは、594名が回答。「病室でWi-Fiは必要だと思うか」の問いに、419名が「絶対必要」と答えた。一方、インターネットを使えなかった243名に「どのような工夫を行ったか」尋ねると、39%が「我慢した」と回答。

 

背景には、医療費で負担をかけている家族にポケットWi-Fiの契約などを頼みにくい患者の事情がある。協議会では、こうした実情に背中を押され、坂本哲志孤独・孤立対策担当大臣や三原じゅん子厚生労働副大臣らに陳情。異例のスピードで、「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」の対象とされた。

 

 

 

病室での孤独解消

 

「導入のハードルは、電子カルテ至上主義。とりわけ病院管理職と電子カルテベンダー担当者での《病室Wi-Fiが電子カルテに悪影響を及ぼす》という固定観念は根強い。Wi-Fiの安全性が確約されたからこそ補助金の対象になったことを理解してほしい」と笠井さん。「私自身の3カ月半におよぶ入院期間中、誰にも会えない孤独から救ってくれたのはインターネット環境。新型コロナによって、病室Wi-Fiはライフラインになった。今後、患者に選ばれる病院になるために、全病室Wi-Fiは不可欠です」。

 

 

一方、今回公表された独自調査によると、Wi-Fiを全病室に備えているのは114病院(約20%)、個室や外来など一部が153病院(約27%)。全く備えていない病院も266病院(約47%)あった。こうした病院が0から設備投資をするならば、数千万円を要する可能性もあるが、実際には、数十万から数百万程度の投資で導入可能な病院も少なくない。ほとんど費用をかけずに安全に整備することが可能なケースもあるという。

 

先の補助金を利用する方法もある。ただし、補助金は病室Wi-Fiのみでなく広くコロナ対策を対象とするもので、申請期限も今月30日までと差し迫っている。期限内に設置まで完了することが条件だが、世界的な半導体不足により設置が間に合わない事態も起きている。「申請期限の延期もしくは目的を限定した補助金の新設が望まれます」と笠井さん。#病室Wi-Fi協議会が示すのは、コロナ時代のニューノーマルの1つのあり方だ。 

 

 

 

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