国交省に政策提言「入居相談窓口の設置や相談員育成を」 一般社団法人高齢者住宅協会

2021年12月17日

一般社団法人高齢者住宅協会(東京都千代田区/以下・高住協)は10月4日、国土交通省に「最期まで自分らしい生活を送ることができる住生活の実現を目指して~大量供給からの転換~」とした政策提言をした。高齢者が「自己決定」により希望する住まい方を選択できるよう、消費者にわかりやすい一元的情報提供やサポート体制の整備などを求めた。

 

 

高齢者住宅協会竹中会長(左)、国土交通省 淡野博久住宅局長(右)

 

 

 

同協会は、高齢者の住生活のあり方、サ高住運営事業者のサービス品質向上などに関する調査研究、情報交換、提言を行っている。

 

 

今回の提言について、高住協の吉田肇企画運営委員長は、「自宅で過ごす高齢者は、要介護状態になって初めてサ高住などへの入居を検討する。本人が早めに住まいを選択できる体制を目指すべきと考えた」と話す。

 

具体的内容は、

(1)高齢期に備えた適切な住まい選びのための情報環境の整備

(2)多様な高齢者向け住宅の供給

(3)高齢者が居住する住宅資産を活用するための仕組みの整備

―の3点。

 

 

(1)では、要介護状態になる前の早めに相談できる総合相談窓口の設置や相談員の育成が必要であり、サ高住と有料老人ホームなどの情報を一元的に提供すべきであるとした。併せて、過剰なサービスの是正も重要とする。

 

(2)では、自宅での生活継続のため、改修による住宅性能の向上のほか、IoTを活用した見守りサービス提供の必要性を掲げる。今後も高齢者人口の増加が予想される大都市部においては、サ高住の新規供給が必要であり、核となるサ高住の近隣に小規模なサ高住を建設する「サテライト型サ高住」の展開が考えられるとした。

 

(3)では、リバースモーゲージ、リースバックなどの金融制度の充実と住宅資産の流動化に関する税制の活用、家財整理や身元保証の仕組みを発展させ、さらにこれらをワンストップで相談できる体制の整備を図るべきとした。併せて、瑕疵担保保険の充実など、既存住宅の利活用を促進する方策についても考えるべきとしている。

 

 

 

入居相談者の半数「本人以外」が課題

 

この政策提言の背景には、以下のような高齢者の住まいにおける課題がある。1つには、入居相談・決定を「本人以外」が行っていること。紹介会社を対象とした調査によると、相談を受け成約した場合の相談者の内訳は、「別居の子ども」が47.7%と約半数を占め、「本人」は7.8%にとどまっている(図1)。

 

また1つには、高齢者の多くが希望に沿った場所で終末期を迎えられていないこと。内閣府の調査によると、72.8%が自宅(子どもの家・高齢者向け住宅含む)で終末期を迎えたいと希望しているのに対し、実際には75.9%が病院で最期を迎えている(図2)。

 

 

 

 

 

政策提言を受け、国土交通省住宅局安心居住推進課の上野翔平企画専門官は「高齢者の視点に立っており、最期まで自分らしく自立した生活を送るため、いかに『自己決定』できる環境を整えるかが鍵」と話す。「住まいの一元的情報提供においては、介護サービス情報公表システムでサ高住、有老も検索できるよう改変している。今後、さらに利用者の使いやすさを高め、充実させていく予定」(上野企画専門官)。

 

 

国土交通省住宅局安心居住推進課
上野翔平企画専門官

 

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