団塊世代の大死亡時代/武藤正樹氏

2021年12月20日

最近、自分と同じ年代の団塊世代の病気や死と直面することが多くなった。1947年から49年生まれの団塊の世代は800万人もいる。私も1949年生まれの団塊世代だ。この団塊世代の先頭集団が来年2022年から75歳以上の後期高齢者に突入する。

 

先日も外来で、同い年の男性の進行食道がんを見つけた。首の周りのリンパ節の腫脹で来院され、内視鏡で検査したら食道がんだった。1ヵ月前には同い年の女性の肝機能異常を見つけ、腹部CTで検査したところ、膵体部がんの肝転移が見つかった。その女性は1ヵ月半ほどでお亡くなりになった。このように団塊世代の病気や死に立ち会うことが増えてきた。

 

 

幸い自分はまだ元気だ。そこで「団塊の世代の何割ぐらいが生き残っているのだろう」という素朴な疑問を持った。それを知るには厚生労働省が5年に1度作成している「生命表」を見てみるのが早い。生命表とは、生存曲線グラフのことで人は何歳で何人生き残っているかを10万人当りの数字に換算して表したグラフだ(図)。

 

 

 

 

男性の生存曲線は70歳頃から急に坂道をジェットコースターのように転げ落ちる。一方、女性は少し遅れて転げ落ちる。この生命表から推測すると、現在、団塊世代の男性の8割はまだ生きていることが分かる。女性の9割は生きている。でも男性は80歳になれば6割、90歳になれば2割、95歳になれば5分しか生き残っていない。

 

団塊の世代はこれから「生命表の断崖」を真っ逆さまに落ちていくのだ。このため国内の死亡者数もうなぎのぼりとなり、昨年は年間137万人以上が亡くなっている。岩手県1つ分の人口が亡くなっているのだ。これから団塊の世代の大死亡時代が本格的にやってくる。 生命表の断崖を上から見下ろしてみて、ドキドキした。

 

 
武藤正樹氏(むとう まさき)
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)
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