和太鼓演奏で介護予防 バチを使ったストレッチも 音健アワード入賞作品

2022年2月19日

前号(1月19日号)で紹介した「一般社団法人日本音楽健康協会(東京都品川区)」が主催する、優れた音楽レクリエーション事例を表彰する「音健アワード2021」。入賞した10作品の中には、高齢者施設での音楽レクの実践事例もある。

 

今回は「ミュージックセラピー賞」を受賞した、川崎市の介護付有料老人ホーム「ヒルデモアたまプラーザ・ビレッジⅠ」(以下:ヒルデモア)の事例などを元に、効果的な音楽レクのあり方や、コロナ禍での音楽レク実践時のポイントなどを見てみよう。

 

 

 

アクティビティは専門スタッフで

 

ヒルデモアは、5階がアクティビティとリハビリテーション専用のフロア。ホームにはアクティビティ専門のスタッフが複数在籍しており、専門性の高い良質なアクティビティが実施できる。

 

一般の介護スタッフはアクティビティのメニューを考え、実際に行う必要がないために介護に専念できるというメリットがある。

 

 

 

少人数で密な声がけ可能 参加者の能動性引き出す

 

なお、新型コロナウイルス感染症が広がる前までは、入居者が5階まで移動していたが、コロナ禍の今は「密を避ける」「万一感染者が出ても影響がホーム全体に及ぶのを防ぐ」という観点から、アクティビティは同じフロアの入居者だけで行うか、スタッフが居住フロアを訪問して行う。

 

「1回当たりの参加人数が少なくなったことで、参加者一人ひとりの様子に目が行き届き、密な声がけが行えるようになりました。参加者の能動性を引き出せるようになったと思います」と岩佐茂支配人はそのメリットを語る。

 

 

 

バチを使ったストレッチも

 

今回、「ミュージックセラピー賞」を受賞した「和・太鼓アクティビティ」は文字通り和太鼓を使用したもの。

 

太鼓やタンバリンなどの打楽器は経験の有無に関係なく、誰でも簡単に音が出せることから、高齢者施設や障害者施設、保育施設などでも多用されている。

 

それらの打楽器の中でも和太鼓は、

①演奏に際して、腕を上下させる動きが大きい

②大きな音・振動が刺激になる

③(立って演奏する場合)やや膝を曲げて腰を落とす姿勢になるため、足腰が鍛えられる

などの特徴があり、高齢者の体力維持、介護予防や認知症予防が期待できる。

 

 

和・太鼓アクティビティのインストラクターはプロの太鼓集団の養成所に在籍していた経験のある太鼓の専門家。アクティビティでは大きさの異なる複数の和太鼓や、外国の太鼓などを用意。途中で担当する太鼓を交換するなどして、参加者が飽きることがないように工夫している。

 

和太鼓アクティビティの様子

 

 

 

また、演奏前には、太鼓のバチの両端を握って腕を前に伸ばして腰をひねったり、腕を上下に動かしたり、またバチを縦にして下の端を握り、手を放してバチが下に落ちるまでのあいだに再び空中でキャッチしたりする準備運動も行う。

 

音健アワード2021で審査委員を務めた歌手で音楽健康指導士の春日くに子氏は、表彰式の席上で「理にかなった非常に優れた運動だ」と高く評価していた。

 

 

 

レク1日4時間 生活機能を向上

 

また、「音健アワード2021」では、福島市の社会福祉法人すこやか福祉会も入賞した。 同法人は、市からの委託を受け市内でデイサービスを運営しているが、ここでは施設全体の音楽レクリエーションの後に4~5人程度のグループに分かれての生活機能向上プログラムを実施している。

 

メニューは体操、歩行訓練、ゲームなど。利用者一人ひとりの身体や生活状況、必要とされる機能訓練の内容などに応じてグループ分けし、それぞれに看護師・作業療法士・あん摩マッサージ指圧師などの専門家が付いて指導する。

 

昨年4月からは、こうした集団形式の音楽レクと生活機能訓練プログラムを合計1日4時間実施し、利用者全員について昨年4月の介護報酬改定で新設された「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」を算定できるように取り組んでいる。

 

 

「音健アワード2021」への出品作品「みんな一緒に大きくエール」は、同法人の8つの事業所をオンラインでつないだ音楽レクの様子を撮影したもの。コロナ禍に対応したレクのあり方を示したことが評価された。

 

 

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