医師が叶える旅行 ホーム入居者の夢実現へ 【対談】トラベルドクター×アライブメディケア

2022年2月27日

 

 

 

年齢や病気で諦めていた旅行を、医師を始めとする専門職チームが同行することで叶えるトラベルドクター(東京都港区)。都内中心に介護付有料老人ホームを運営するアライブメディケア(同渋谷区)は、トラベルドクターと連携し入居者の夢であった旅行を実現させている。医師として旅をサポートするトラベルドクター伊藤玲哉社長とアライブメディケア安田雄太社長の2 人に話を聞いた。

 

 

トラベルドクター
医師・代表取締役
伊藤玲哉氏

アライブメディケア
代表取締役社長
安田雄太氏

 

 

 

■――伊藤社長が医師として旅行業を始めた経緯は

 

伊藤 医師でも治せる病気と、治せない病気があります。医療の現場では当たり前のように身体抑制や蘇生、延命が行われていることに疑問を持ち、自分は何ができるか考えていました。患者さんの声を聞くと、「旅行に行きたい」という願いを多く耳にしてきました。 私がすべきことは病気を治すことでなく旅行に行ってもらうことだと気付いたのです。大学病院に2年間勤務して総合診療医や麻酔科、在宅診療も経験したのち、29歳で起業を決意。一昨年の12月に会社を立ち上げました。

 

 

 

「旅行は無理」から脱却

 

 

■――安田社長が伊藤社長とタッグを組み、旅行を提供し始めた背景は

 

安田 かねてより、入居者や家族はホームに入って本当に幸せなのか?と考えてきました。 今まで当社の施設でも、複数名の入居者と団体で旅行する機会はあり、旅行先だと固めの食事でも完食する、浴槽を軽々と跨ぐなど元気に輝く入居者の姿を目の当たりにしました。 オーダーメイドの個人旅行でその人の夢を叶えることが、当社の目指すべき姿だと思い、伊藤社長にお声がけしました。

 

 

旅行を実現したホーム入居者(中央)

 

 

 

■――旅行を諦めている人は多いか

 

安田 そうですね。本人だけでなく、介護する側が「高齢者だからしょうがない」「何かあったらいけない」という固定観念を持っているのではないでしょうか。

 

伊藤 リスクはゼロにはできませんので、旅行の際のリスクをいかに下げられるかを考えていきます。トラベルドクターでは私や看護師、理学療法士などがチームとなり、施設の介護職員さんとも力を合わせて旅行をサポートしていきます。 今までヘルパーや看護師が旅行に同行するサービスはあったかと思いますが、医師がいるからこそ寝たきりや重症な方の旅行も実現できます。

 

 

 

オーダーメイドのプラン

 

 

■――旅行にあたり、行う準備は

 

伊藤 ご本人の要望を聞き、オーダーメイドのプランをつくります。車椅子でも泊まれるか、観光できるかを事前に調査し、下見にも行きます。浴槽の高さを測る、お手洗いや食事もチェックするなど、「行けない理由」をつぶしていきます。 ゆったりした工程を組み、どの移動手段や宿泊先、観光先がベストかを考えます。

 

安田 旅行が叶えられるよう、日々の自立支援・認知症ケアに力を入れています。ケアプランに「〇〇に旅行に行く」と盛り込むと、ゴールが明確で、ケアの仕方が変わってきます。 入居者の可能性を引き出せるよう、介護職員もやりがいを持つようになり、スキルアップにもつながっていきます。

 

 

諦めていた旅行を楽しむ利用者

 

 

 

■――今までにどのような旅行を実現してきたか

 

伊藤 この1年で15組の旅行をサポートしました。在宅の方や介護施設、病院で過ごされている方など様々で、慢性疾患や難病をお持ちの方、余命が2日の方もいらっしゃいました。

 

安田 当社では昨年の11月、103歳で介護度3の女性の入居者が「熱海への家族旅行」を実現されました。最初は家族も不安な様子でしたが、旅行を通じて幸せになっているのは本人だけでなく家族や職員もだと感じました。

 

 

伊藤社長が入浴をサポート

 

 

 

■――今後の目標は

 

安田 「行きたいところに行きたい人と」をコンセプトに、まずは各施設で毎年1回は実現できるよう、継続していきたいです。入居時の段階で「半年後には旅行に行けますよ」と本人や家族にゴールを提示したいとも考えています。

 

伊藤 多くの人に広めるための仕組みを構築していきます。目の前の患者さんが何をしたいか耳を傾け、選択肢を与えたいです。「旅行医」として旅行を「処方」できる世の中にし、人生最期の1ページを旅行で飾れるよう、医療の力で叶えていきます。

 

 

 

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