【新連載】在宅看取り20年目の回答 <第1回>看取り現場のリアル/平野国美氏

2022年6月17日

 

 

20年で2500人以上の看取り 年々変わっていく訪問診療現場

 

みなさん、はじめまして。つくば市の片隅で訪問診療を行っております「ホームオン・クリニックつくば」院長の平野国美と申します。 長続きができない自分でありますが、この春で訪問診療専門クリニックが20年目を迎えました。5500人以上の患者さんと、その家族に出会い、2500人以上の最期に立ち会えました。はじめの5年は私一人での「看取り」でしたが、今は医師数名と一緒に患者さんのお宅や施設に伺っております。

 

 

さて、宣伝になってしまいますが、10年ほど前に、「看取りの医者」なる本を世に上梓いたしました。実際に自分の患者さん達の現場で起きた感動の9編を、まとめあげたものです。

 

1年後、ドラマ化の話が起こり、制作作業が進んでいく中で私は素直に自分の疑問をぶつけてみました。 「私などは田舎の名も無い開業医でして、何の文句もないのですが、この本は私が主役として書いているわけでして、私の役は、どなたが演じられるのでしょうか?贅沢は言いませんが、福山雅治さんとか笑福亭鶴瓶さん辺りですと光栄なのですが教えていただけないでしょうか? 」。 答えは、「現在のところは秘密です」。何度か食い下がると、口外しないことを宣誓させられ、やっと聞けた答えは「大竹しのぶさん、既に原作は読んで頂いている」。軽い眩暈の中、「女医の話になるのか」と呟いたのを覚えています。

 

 

そこから、3ヵ月間の準備期間を助監督一同と夜中を共にし、ロケ地は、ほぼ、つくばで撮影が決まり、撮影中は、主役、大竹しのぶさんのあらゆる質問に答えるべく待機し、携帯で呼ばれたら、リアルな自分の患者さん宅に向かうという怒涛の10日間を過ごしたのでした。

 

準備期間中に助監督達からの質問に「患者さんが、どういう部屋で過ごされているのかわからないので、見学させて頂くことはできないか?」とあり、「普通の民家に介護ベッドを入れて暮らしているんだよ」と説明しました。まだ、若い彼らは核家族の中で育っており、祖父母や病人との同居の経験は無かったのです。

 

 

私は彼らに2軒の異なる形態の家を承諾を取った上で連れて行きました。1軒は現代仕様のフローリングの部屋。もう1軒は伝統的仕様の農家で畳張りの部屋に仏壇があり、助監督達に衝撃を与えたのが壁に飾られている先祖の肖像画。犬神家の一族みたいですね。

 

私が彼らに伝えたかったのは、良いとか悪いとかでなく時代の流れで住居や患者さんを取り巻く環境、文化は変わっていくということ。 今の患者さんの部屋では井上陽水や小田和正が流れているのです。

 

 

開業した当時、団塊の世代は患者家族として親の介護をしていましたが、20年経って、今度は団塊の世代が患者として現れてきたのです。同じ日本人が患者さんなのですが、世代間で文化背景、家族背景が異なり、思考や価値観も全く異なっているのです。そして、死生観も変わっていくと思うのです。

 

 

 

平野 国美(ひらのくによし) 医療法人社団彩黎会 ホームオン・クリニックつくば 理事長/医学博士 1992年に筑波大学を卒業。その後、筑波大学附属病院及び県内の中核病院にて地域医療に携わる。2002年に訪問診療専門クリニック「ホームオン・クリニックつくば」を開設し、翌年に医療法人社団「彩黎会」設立。 20年以上にわたり在宅医療や看取りに従事している。著書「看取りの医者」(小学館)は、11年に大竹しのぶ主演でドラマ化された。

 

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