Instagram? TikTok? 介護事業者 注目のPR活動「効果ある」SNS戦略 施設の魅力発信に

2022年10月14日

Facebook やTwitter、Instagram、TikTok など多様なSNS ツールを活用し、情報発信を試みる事業者も増えている。一方で、「継続的な投稿ができていない」「効果が見えない」「そもそも使い方がわからない」といった声も少なくない。

ここでは、着実にSNS 運用を業務に組み込み、職員や利用者を巻き込みながら発信する事例や、施設のPR に成功し、採用や利用者獲得につなげている事例を紹介する。

 

 

 

◇ケース1◇ 短期間で10倍フォロワー獲得

 

Facebook・Twitter・Instagramをそれぞれ各店舗で発信しているSPRISE(埼玉県越谷市)。今年7月中はInstagramのフォロワーは2000人ほどだったが、現在一番多いアカウントでは10倍以上の2万6000人(9月中旬時点)に達した。

 

同社は半日リハビリ特化型のデイサービスを直営4店舗・FC4店舗首都圏に展開。「プラチナライフをかっこよく」をテーマに、柔道整復師・PT・OT・STなど資格を持った職員を揃え、「質の高いリハビリ」に注力する。
「1年程前SNSを始める際、強みである『質の高いリハビリ』『明るいスタッフ』『元気な利用者』の3点を打ち出し、ケアマネジャーを主なターゲットとしてデイの様子を知ってもらう目的で発信する、と決めた」(田中秀治社長)

 

 

SPRISE
田中秀治社長

 

 

効果があったのは、一定期間、店舗同士でフォロワ―の数などを競い合い、一番多かった店舗には商品を授与するレースを定期的に実施したこと。「リール(動画)の再生回数」を競った際、ある1つの動画が600万回以上再生され、それを機にフォロワーが一気に増えたという。

 

「その動画は、楽しいレクリエーションの様子を撮ったもの(下写真)。一方で、『質の高いリハビリ』を打ち出したいため、リハビリの様子・車椅子だった利用者が立って踊る様子など、テーマをぶらさない発信も心がける」(田中社長)。

 

 

反響を呼んだ動画。皆で力を合わせ、団扇で風船を飛ばしている

 

 

 

7秒以下で、何度も見たくなる動画が良いなどの知識と経験も積まれてきた。ケアマネのフォロワーもおり、営業時のツールとしても活用。

 

さらに職員3名の採用にもつながった。SNSの使い方がわからない職員も多かったが、レース性を取り入れた運用を通じ、職員同士が教え合うことで団結力が向上。利用者にも競っていることを伝え、積極的に撮影協力や投稿内容の提案をしてもらうなど帰属意識・来所意欲が高まったという。

 

「利用者自身がInstagramを始めて孫とコミュニケーションをとるようになるなど、思わぬ波及効果を感じている。SNSは、当社のデイに来ればこんなに元気になる、高齢者のパワーはすごい、と発信する重要な手段であり、職員や利用者の可能性を引き出すツールでもある」(田中社長)

 

 

 

◇ケース2◇  SNSから採用 新卒など20名

 

社会福祉法人福住山ゆりの里(兵庫県丹波篠山市)が運営する特別養護老人ホーム「やまゆりの里」(同)は職員獲得を大きな目的に、3年程前からSNS発信を本格的に開始。これまで約20名をSNS経由で採用している。

 

同施設は、「家に帰りたい」など入居者の夢を叶えるべく、以前から日々のケアに向き合ってきた。おむつ使用率ゼロ、全員個浴で対応する、外出や農作業の機会を生み出す、など取り組みは多岐にわたる。「介護の質には自信があった。当施設の取り組みを広く知ってもらうため、『夢を叶える介護』と打ち出し、発信を始めた」(首藤風施設長)

 

 

2016年にFacebookとInstagramを開始。最初は職員からの反対もあり、続かずに投稿を辞めていた時期もあったが、いくつかのルールを決めたことで、職員の意識が少しずつ変わっていったという。

 

例えば、▽いつ撮影しても良いとし、身だしなみ・清掃意識が向上▽入居者さんが喜ぶことを数多くするとし、イベント数が増加・クオリティーも向上▽投稿内容を必ず見ることとし、施設の方向性を知ることで帰属意識が向上、など。

 

現在は毎日投稿し、Instagram・TikTokのフォロワーはどちらも1万5000人以上に上る。
ポイントは、入居者が作業に取り組む「過程」を動画撮影し、投稿すること。自然な笑顔や夢を叶えるストーリーが共感を生む。また、「おなじみの入居者」をつくることを意識。「Yさんに会いたい」と思ってもらうことがファン作りにつながる。

 

 

“夢を叶える感動の様子”や介護技術の投稿が人気

 

 

「SNSで『良い施設に見せる』ことは容易にできる。一方で、『見学に来たらSNSとイメージが違う』とマイナスになることもあり得る。『SNSのため』よりも、そもそも良い施設づくり・介護の質を高めるために皆で考え、取り組むことが何より重要だ」(稲葉夏輝相談員)

 

 

 

 ◇ケース3◇  ファン5万5000人 明確なテーマ発信

 

ひだまり介護(京都府船井郡)が運営するデイサービス「くろまめさん」(同)。稲葉耕太社長が発信するInstagramのフォロワーは5万5000人以上。施設の“ファン作り”につなげている。

 

デイでは、利用者が慣れ親しんできた農作業や釜での炊飯など日常的な「田舎暮らし」の作業をして過ごす。さらに地域の誰もが気軽に集える屋外スペースや、民宿も併設。地域住民と協力し、特産物である黒豆の栽培や販売も行うなど、地域コミュニティを活性化する場としての役割を施設が担っている。

 

この「田舎暮らし×介護」をテーマに、2020年からInstagramを開始。利用者が活き活きと作業する姿や懸命に助け合う姿、介助技術などを発信中。フォロワーからのダイレクトメッセージは多い日で100件にも及ぶという。最近ではフォロワーが施設に足を運び、一緒に農作業するなどオフラインでの交流も深めている。

 

 

フォロワーを増やした要因について稲葉社長は、「ただ更新するだけではファンは獲得できない。オフラインで『田舎暮らし×介護』の明確なビジョンを持ってコミニュニティ作りに励み、利用者の生き甲斐を生み出しているからこそ、オンラインでも応援される」と語る。

 

 

“利用者のかわいい姿”が共感を呼ぶ

 

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