「老人ホーム入居権」語る詐欺 急増 前年同期の5倍近くに
独立行政法人国民生活センター(東京都港区)は昨年12月7日、老人ホームの入居権に関わる詐欺電話についての消費者相談が急増しているとして、国民への注意喚起を行った。
同センターによれば、この手口に関する消費者からの相談件数は2014年には3322件あったが、その後はほぼ一貫して減少し、21年は148件となった。しかし、22年は10月末時点で685件と一転して増加。21年比で5倍近い件数となっている。なお、当事者の年齢は70歳代が圧倒的に多く70.9%。

「老人ホーム入居権」に関する劇場型勧誘の相談件数の推移
(出典:国民生活センター)
主な手口としては、大手建設会社やハウスメーカーなどを名乗る人物から「あなたには老人ホームの入居権がある。もし入居しないなら権利をほかの人に譲って欲しい」と電話がかかってきて、承諾すると「権利を譲渡するにはいったん費用を支払う必要がある」「あなたの名義で申し込むので、一度費用を支払って欲しい」などと金銭を要求するというもの。断ったり渋ったりしていると「裁判になる」などと不安をあおる。
また、類似のパターンとして、その後弁護士などを名乗る人物から「名義貸しは違法だが、お金で解決できる」と連絡があり、金銭を要求するものもある。
こうした手口が再び増加している理由について、同センターでは特に言及していないが、一般的な「還付金がある」「会社の金を使いこんだ」など詐欺電話の手口が広く知られるようになり、成功率が低くなっていることが一因と思われる。その結果として、高齢者の中でも比較的若い年代層の人にはなじみが少ない「一昔前の手口」が増えていると推測できる。
こうした手口の増加は、介護業界にとっては、自社の社名や施設名が悪用される可能性もあるという点に注意が必要だ。訪問・通所介護事業者などは利用者への注意喚起を行うなどの対応策も求められる。