【財務管理のテクニックを聞く】ICTを核に生産性向上 コストコントロールにも力点 やさしい手(目黒区)

2023年2月21日

 

在宅系サービスを主軸に、介護事業16種、全国で約300事業所を手掛けるやさしい手(東京都目黒区)。コンサルティングやシステムの開発・販売・導入サポートまで幅広く展開している。同社が取り組む財務管理のテクニックやICT活用について、管理本部の有賀和敏本部長、通所統括支社の下田哲也支社長、コンサルティング事業本部ソリューション事業部の前田和世副部長の3名に話を聞いた。

 

 

 

 

「人依存」を脱却し持続可能性を追求

 

────2年前より、固定費のコントロールに向けた各種取り組みを行っていると聞きました
有賀 介護事業を運営する上での固定費は、その多くを人件費が占めます。固定費は売上高の増減に関わらず発生する費用であるのに対し、変動費は売上高の増減に比例して発生する費用。固定費を圧縮するほど、利益が出やすい組織になります。当社の基幹事業である訪問介護における人材は、大きく正社員と非常勤社員(登録ヘルパー)に分かれます。正社員は固定費、非常勤社員は変動費の扱いになるため、非常勤比率を上げることで変動費率を高めています。

 

介護事業は、介護報酬改定の影響で収益が変動する上、災害・社会情勢による影響も大きく受けます。進展する超高齢社会においても、ニーズが高まる一方で、高齢者数の変化などには地域差も大きい。こうした不確実性のリスクに柔軟に対応しつつ、利用者にサービスを提供し続けられる会社であるための策であり、繁忙期に確保した人材がその後余剰となってしまう、教育のコストがかかりすぎてしまうといったリスクへの対応です。

 

他方で、訪問介護では人材確保が難しい現状がある中、主婦層などには、時間に柔軟で働きやすい登録ヘルパーとしての雇用に需要があるという実感もあります。就職希望者の生活に合った形で、無理なく働き続けてもらえる環境整備にも力を入れています。

 

 

 

────これらのコントロールを行いつつ、サービスの質を維持・向上するための仕組みとは
有賀 以前は拠点ごとに勘定科目などを見てきましたが、これをサービス種別ごとに見られるようにした上で、科目ごとの「標準ライン」を設定しました。例えば住宅系サービスでは、施設規模に応じて朝、昼、夜の時間帯ごとに最適な人員配置基準を定め、その中で収めるよう取り組んでいます。

 

サービスごとにこうした細かいルールを作り、各勘定科目を横串で見ることで、「標準ライン」を超えてしまっている拠点について検討することができます。この際、変動比率や損益分岐など様々な角度から異常値が見えてくるので、「売上に応じた投資になっているか」を常に確認できます。

 

同時に、この「標準ライン」はサービス品質を守るものでもあります。これを下回っているようなケースも、すぐに拾い上げ対応することが可能です。会社の持続可能性とサービスの質両方を維持する上で、当社にとって重要な指標です。

 

 

 

────デイサービスにおける、コロナ禍の対応について教えてください
下田 常に「稼働率を落とすことなく通常営業を続ける」ための取り組みを行っています。職員のワクチン接種を積極的に進めることで罹患の際にも重度化しないよう管理することに加え、2年前の流行直後よりICTも活用しています。「ばいたるイルカ」という、出勤前に職員が体温を入力することにより発熱者を把握するシステムを自社開発し活用してきました。出勤時に検温を行う場合、万が一陽性であった際すでに事業所にいることがリスクになりますが、システムを活用することで出勤前に情報を共有することができます。発熱した職員への速やかな検査誘導などフォローも可能で、蔓延防止に寄与してきました。

 

 

 

――積極的にシステム導入を行っていますが、その真の目的とは
前田 職員の負担軽減、業務の可視化・効率化など目的は様々ありますが、最も重要なのは「業務の標準化」だと考えます。介護の仕事は「人依存」の側面が強く、「人」ごとの業務のバラつきが収益にも影響します。例えば、ある登録ヘルパーが月170時間勤務したというデータがあるとして、そのうち実際にサービス提供をしたのは何時間かという分析まで可能な仕組みが、当社にはあります。こうしたデータを基に、より生産性を高めることができます。

 

現在、デイの送迎ルート作成でもシステムを活用しているところです。他システムとの連携など課題はありますが、ゆくゆくはルート作成業務を、人ではなくシステムが行えるよう活用していく考えです。ルートやシフトなどの作成は立場のある職員が行うケースが多いですが、これも「人依存」です。Aさんにしかできなかったこれらの業務が、システム活用によりBさん、Cさんもできるようになる。これが業務の標準化であり、こうして生まれた時間によって、AさんはBさん、Cさんの育成に時間をかけることができます。業務の標準化が、サービスの質の向上に直結するケースと言えるでしょう。

 

訪問介護では、利用者のサービス予定とヘルパーの就労予定を照らし合わせ、最も近くにいるヘルパーをボタン1つで派遣する、ということが1つのシステムでできるものもあります。当社は開発側なので補助金を活用できませんが、こうしたシステムをパッケージで導入する事業者は、経済産業省や各都道府県が実施しているICT導入補助金を活用できます。

 

また、当社では、各種処遇改善加算の使途の管理にもシステムを活用しています。先述のように、職員それぞれの生産性なども把握可能なので、頑張っている人に頑張った分を支払う制度、評価に基づいて支払う制度など手当を15種類創設し運用。本社直轄のプロジェクトチームによる評価などもあり、職員のやる気や生産性の向上につながる仕組みになっています。「人」に依存せず「システム」にも依存しない、当社ならではの運営を目指していく考えです。

 

 

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