利用者視点で生産性向上 導入支援補助、今後の扱い注視を 公益財団法人テクノエイド協会

2023年2月27日

 

 

介護現場における生産性向上に向けたICT活用や、介護ロボットの普及促進に向けた取り組みが現在、各事業所で進められている。補助事業の実施主体となる各都道府県の状況や補助対象となる機器などについて、公益財団法人テクノエイド協会(東京都新宿区)の五島清国企画部長に話を聞いた。

 

 

公益財団法人テクノエイド協会
五島清国企画部長

 

 

令和5年度新たに設置へ 各都道府県に一括窓口

 

 

――介護現場のICT活用の現状について

五島 移乗用リフトやセンサー類など、入居系施設での活用事例がよく聞かれますが、在宅系サービスにおいても自発的に導入が進んでいると感じます。業界団体の勉強会などで話を聞くと、事業所とヘルパーの連携、利用者とのマッチングなどにおいてもシステム化が進んでいることがわかります。

 

厚生労働省による導入補助は「地域医療介護総合確保基金」の利用が多く、実施主体は都道府県。基本的には2分の1を下限に補助がなされますが、4分の3まで下限を引き上げるための要件も拡充されています。

 

 

――介護ロボットの普及については

五島 厚労省「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」においては、当協会でも開発・実証フィールドの募集をするなどし、介護現場「ニーズ」と開発側「シーズ」のマッチングを支援しています。

 

実際に製品を比較して選ぶことができる機会は少ないため、当協会では、統一の基準で細かくスペックを示した介護ロボットの「試用貸出リスト」をHPに掲載しています。実際に試用することで利活用の検討につなげてもらいたい考えです。

 

当協会では、介護ロボットの導入や補助の活用に関する実態調査を18年度から実施。22年度11月時点の結果も公表しており、4月には年間の確定値も出します。都道府県ごとの助成制度の一覧も随時更新しています。

 

20年度に、一律上限30万円であった介護ロボット導入補助額(1機器あたり) のうち「移乗支援」「入浴支援」のものについては上限が100万円に引き上げられました。ほかにも、見守りセンサー導入に伴う通信環境整備( Wi-Fi 工事、インカム)の補助上限は1事業所あたり750万円に引き上げられ、補助台数の制限も撤廃されています。さらに、国が定める一定のスキームを満たすことで、事業主負担を2分の1から4分の3まで小さくすることも可能となりました。

 

一方で、こうした拡充の実施は23年度までの扱いですので、24年の介護報酬改定において、引き続き補助の範囲内で取り組みを進めていくのか、あるいは報酬体系に組み込んでいくのか、注視して見定めていく必要があるでしょう。

 

 

――23年度以降のICT・介護ロボットの導入支援は

五島 厚労省が昨年9月に提出した「令和5年度予算概算要求」で新たに示されたのは、「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」の設置です。介護事業所における生産性向上の取り組みに係る各種相談や支援などを一括し、網羅的に取り扱うワンストップ型の総合相談窓口が、各都道府県に設置されることとなります。順次設置に向かうようで、基金からは3分の2の補助がなされる方針です。

 

24年度以降、全国で同センターの設置に向けて動き出すことが期待されます。基金から細かく実施されている補助のメニューを整理・一括できるため、介護事業者の方々にとってはワンストップで相談できるというメリットがあるでしょう。

 

生産性向上においては、業務の工夫により「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすという捉え方がありますが、介護・福祉は他産業とは異なり「生活の場」であるという認識は重要です。利用者個人の生活において「ムダ」「ムラ」などはあって当然だと思います。福祉用具や介護ロボットの活用が、利用者本人にどのように作用するのか、生活機能がどう向上するのかなど、今一度考える必要があるでしょう。

 

 

事業者においては、こうした福祉用具・介護ロボットの活用をどのようにケアプランに落とし込むかを検討し、プラン見直しの際にはしっかりと要・不要を見極めなければなりません。自施設に取り入れる際、どのような活用がどういった効果をもたらすかという視点とともに、当事者の立場における「良い取り組み」を一層追求することが望まれます。

 

 

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