友人のお母様 いい出逢いが人を変える/女優・介護士 北原佐和子氏

2023年3月25日

 

 

友人のお母様が急に変化した。このひと月ほどお母様は買い物に行くと、財布の中に入っている現金を全て使ってお酒を購入する。なので友人は財布の中身を1000円だけ入れておくようにした。お酒を飲み切ると、中身の入っていない財布を持ち買い物に行く。お金が入っていないからそのまま商品を持ち帰ってしまう。

 

そして警察に通報され、仕事中の友人に連絡が来る。急な変化で戸惑いつつも「私にも生活や仕事がある。四六時中そばにいることはできない」と友人は言う。

 

 

 

ケアマネジャーに相談すると短期間でデイサービスを探してくれて早速利用となった。

デイではすることがない、帰ると言い出すらしい。

 

そこで、デイスタッフは、入浴、おやつ、手作業など、何かしらのイベントを毎回作り「何とかやってみましょう」と言ってくれるので、一応やり過ごすことができている。入浴やおやつと言っても、その時間はものの数十分でそれこそ1時間もかかるものでもない。それでもデイに通うようになってから、帰りたいと言うことはなくなったそうだ。

 

 

私は認知症対応の施設からスタートしているから分かる。施設に来ることがご本人にとって本意でないときは、来たそばから出て行かれることもある。穏やかに1日を過ごしてもらうために、あの手この手とスタッフで知恵を絞って対応するが、そう簡単なことではない。

 

そこのデイでは時には、警察に保護されたお母様の迎えを友人の代わりも引き受けてくれるらしい。活動的な利用者さんの行動を抑制しようと抗精神病薬の服用に頼る施設が多い中でのこの施設の対応は、友人も安心したと思う。聞いている私もとても嬉しくなった。

 

 

私が最初に勤務していた施設はかかりつけ医などおらず、薬に頼ることなど考えもしなかった、だからこそ目の前にいる方のこれまでの人生を掘り下げて、どんなことがお好きで、どんなことで不快な気持ちになるのか、スタッフ全員で悩みながらもケアに取り組んできた。久しぶりにそんな様子が垣間見える施設に出会えてほっとした。

 

チェーンスモーカーである友人のお母様は施設では吸わないらしい。お酒とタバコが欠かせなかったのは時間を持て余した果てのことだったのか。いい施設との出逢いは人の表情をすっかり変えてしまう。

 

 

 

 

女優・介護士 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

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