【上海福祉の今】61年ぶり人口減 少子高齢化加速/王青氏

2023年3月30日

 

 

四川省、未婚者の出産認める

 

 

中国国家統計局は1月17日、2022年末時点の中国(台湾、香港、マカオ除く)の総人口が前年比85万人少ない14億1175万人になったと発表した。61年ぶりに減少に転じた。

 

世代別でみると、16~59歳の生産年齢人口が8億7556万人で全人口の62.0%を占め、60歳以上は2億804万人で19.8%、65歳以上は2億978万人で14.9%となっている。

 

 

政府が発表した最新データの中で、最もインパクトのある数値は、年々下がり続けている出生数だ。これは中国の少子化問題の深刻さを裏付けている。

 

出生率は19年10.41%、20年8.52%、21年7.52%、22年は6.77%と年々減少しており、22年の出生数は956万人だった。36年間実施した「一人っ子政策」が撤廃された16年の出生数1867万人と比べると、この数字がいかに少ないかがおわかりいただけるだろう。わずか6年間で半減している。

 

 

婚姻数も減少しているため、短期間で出生数増に転換させることは非常に難しい。その背景には、経済成長とともに社会競争が激しくなったり、不動産価格や教育費など生活コストが高騰したりしているため、若者は結婚や出産について、悲観的であることがあげられる。

 

 

近年、政府は出産を促す政策を立て続けに打ち出している。例えば、16年には「一人っ子政策」を撤廃し、2人目の子どもを持つことが認められ、21年には3人目が認められた。全国各地政府が出産・育児手当の支給や育児休暇制度の設立など、少子化対策のために躍起になっている。

 

四川省は先日、未婚者の出産を認め、出産保険や出産休暇を提供すると発表し、大きく話題となった。このような未婚者に対する出産対策は、今後ほかの地域も追随すると予測されている。

 

◆ ◆ ◆

 

1962~1975年に生まれた3億6700万人のベビーブーム世代が、高齢者予備軍として待ち構えており、30年には高齢者数は3億6000万人になると予測されている。

 

高齢化と労働人口の減少は中国の経済・社会基盤を大きく揺るがしかねない。約70年間一度も変わってない定年年齢も、いよいよ改正の準備が始まっているという。急速に進む高齢化は、高齢者サービス産業にはさまざまなビジネスチャンスをもたらす可能性が高いと専門家は指摘する。

 

ベビーブーム世代は、高度成長期の恩恵を享受し、高い消費意識や経済力を持つ。故に今以上に高品質、多様なサービスが求められるだろう。こうした巨大な中国の介護市場で、先行する日本の介護ビジネスのチャンスは到来するのか。模索と議論の余地が大きいことは間違いない。

 

 

 

王 青氏
日中福祉プランニング代表

中国上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業後、アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞、ATCの3社で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館ATCエイジレスセンター」に所属し、広く「福祉」に関わる。2002年からフリー。上海市民政局や上海市障がい者連合会をはじめ、政府機関や民間企業関係者などの幅広い人脈を活かしながら、市場調査・現地視察・人材研修・事業マッチング・取材対応など、両国を結ぶ介護福祉コーディネーターとして活動中。2017年「日中認知症ケア交流プロジェクト」がトヨタ財団国際助成事業に採択。NHKの中国高齢社会特集番組にも制作協力として携わった。

 

 

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